2008.12.25 Thursday

酔いどれ

堂上版
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2008.07.24 Thursday

上司お題

忘れることなど出来ない
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2007.12.28 Friday

特務機関に捕まる話?

・革命後、堂上が退院した辺り。
・リハビリ兼ねて、「歩くデート」>電車に乗って周辺をぶらぶらしてる感じ
・武蔵境からほどちかい井の頭公園に向かおうとしていた
・吉祥寺で中央線を降りて歩いていたとき、道の向こう側に特務機関の車を見つける
・道路を渡っていこうとする郁を堂上が止める
 「今、俺たちは丸腰だぞ。それに、手帳も持っとらんだろう?
  非武装干渉区域とは言っても、相手は確実に拳銃を所持しているはずだ」
 「じゃあ、見過ごせっていうんですか」
 「そうだ。お前、図書隊入って何年になる? いつまで新隊員のつもりだ」
 「でも、教官だって、昔、見計らい・・・」
 「何年、俺を見てきた? 見計らい権限は個人の勝手で振りかざすものじゃないと言ったはずだぞ」
 「教官のバカ!」
・止める堂上を振り切って、道路を渡る
 (郁の視力は、2.0。動体視力も多分いいはず。なので、横断歩道もない四車線道路をがーっと突っ切る)
・郁が車を覗くと、中は無人。そのまま観察していると、良化隊員が戻ってくる
 「お前、何をやってる?」「え? あっ・・・。えー・・・とぉ」>拳銃が見えて、ドキッとする
・本を入れてきたコンテナを見て、かーっと血が昇る
 「この本、どうするのよ!」「没収本は廃棄するに決まってるだろう」
 「そんなこと、させない!」「ほお? どうするというのかな?」
 「おい、この女も連れてけ!」「ちょっと! 何すんのよ!」
・郁もコンテナと一緒に車に押し込められそうになる
・「あのバカッ!」郁がもがいている間に、堂上も道路を渡って駆け寄る
・良化隊員は10名ほど。武器も携行しているため、警棒で殴られて、二人とも車に
・気がつくと、倉庫のようなところに連れ込まれていた
・堂上は後ろ手に手錠をかけられ、パイプのようなものに繋がれている
・隣に郁もいる
・「お前たち、図書隊だな?」
 最初は黙っていたが、堂上が何度も殴る・蹴るされて、郁は「そうよっ!」と答えてしまう
・「・・・図書隊ごときに何ができる?」>バックが国家権力のため、強気
・「あんたたちがどんな卑劣なことしてるか、暴いてやるわよ!」
・「・・・威勢のいい女だな? だが、どこまで持つかな?」
・小牧の時のような、拷問を予想したけれど、違っていた
・「自分がか弱い女だってこと、思い知らせてやる」
・「やめろ!」堂上が先に気づいて声を上げるが、ガチャンと手錠に阻まれる
・郁だけ手錠を外されて、「ほら、逃げてみろよ?」と、遊ばれる
・良化隊員はこの場に5人いて、結局、逃げ切れずに角に追い詰められる
・「ほらな? 何もできないだろ?」
 くくっと笑って、郁の手を捻り挙げる
・郁も図書隊員として訓練した身。抵抗しようとするけれど、歯が立たない
 初めて堂上と柔道で組んだときに感じた「筋肉の質が根本的に違う」というのを思い出す
 どんなに訓練しても、結局は勝てないの?
・服を脱がせようと伸びてくる手を振り払うことができない
 手足をばたつかせても、時間の問題だ
・「やめろっ!」 堂上の怒号が倉庫を震わせる
 ガツッと鈍い音がして、堂上の手錠が千切れている>かなり手首にも食い込んでますが
・郁に気を取られていて、堂上の周囲には誰もいなくなっていた
・だが、まだ良化隊員は数の優勢を過信して、堂上を甘く見ていた
・険しい表情の堂上を見慣れているはずの郁でさえ見たことないくらいの鋭い視線で一瞥すると、
 だっと一気に良化隊員のところへ走る
 かなり殴られたりしていたはずだが、ほとんど堪えてなかったようで、
 5人をすべて投げ飛ばしていった
・反撃されぬよう、良化隊員が持っていた武器を奪い、拘束具で縛り上げる
・郁はがくがくと体を震わせていて、堂上が近付いても逃げようとする
・力尽くで抱き締めて、「郁っ!」と名前を叫ぶ
・びくんと郁が反応して、ようやく堂上を見つける
・恐怖で泣き出した郁を抱き締めたまま、ふーっと座る
・ポケットを探って、携帯電話を取り出すが、蹴られたりしたときに壊れたようだった
・郁のバッグから携帯を探して、小牧に電話をかける
 「あれ? 笠原さん、今日は堂上とデートじゃなかった?」
 「小牧、俺だ」「・・・堂上? なんで笠原さんの携帯使ってんの?」
 「俺のは壊れた。今、寮か?」「何か、あった?」
 小牧は堂上の様子から察したようで、状況を説明する。
 「笠原の携帯で、GPS探ってくれ。どこに連れ込まれたのかもわからん」
 「良化隊員たちは?」「・・・そこでのびてる。骨折くらいはしてるかもな」「・・・容赦ないなぁ」
 「とにかく、場所突き止めて、迎えに来てくれないか。動けん」
 「・・・笠原さんは?」「怪我はない」
 その含みでわかったのか、小牧はそれ以上聞いてこなかった。
・小牧は一人で迎えに来た
 車の後部座席に乗り込んでからも、郁は堂上にしがみついたまま
・寮に戻ると、小牧から柴崎に話がいっていたようで、玄関で待っていた
・「すまん」と、部屋まで運ぶ
 「随分、やられたね? 医務室行っときなよ」と小牧に言われ医務室へ
・良化隊員はさすがに顔などの見える位置は殴っていない
 見える傷といったら、手首の擦過傷くらい
・部屋に戻って着替えるために服を脱ぐと、腹を中心にかなり痣ができている
 数は多いが内臓までは到達していないものばかりだった
・少しうとうとしているとノックされた
 小牧だと思いドアを開けると、郁が立っていた
・「お前っ! 何やってんだ!」
 周囲を見回して、誰もいないことを確認すると、「とにかく、入れ」と室内に入れる
・「ごめんなさい・・・。迷惑だってわかってたんですけど・・・。恐くて眠れなくて・・・」
 俯いたその体は、まだ震えている
・堂上が触れると、びくりと反応したけれど、そのまま抱き締めた
・「そばにいてやるから、安心して寝ろ」
 ぽんぽんっと頭を撫でる>この行動は無意識なんだよね、堂上さんは
 でも、郁はそれで安心して、すうっと瞳を閉じる
・その後、小牧も来る
・「うわ、びっくりした」>言うほど驚いてはいない
・「いいね、笠原さん。無鉄砲でさー」「こっちの身が持たん」
 「うん・・・。苦労するね、堂上」
 郁は起きる気配ないし、堂上も小牧がいることも気にしてない。
・「で? 状況は?」
 「捕虜にするわけにもいかないしね。基地についてから、管轄の消防に怪我人がいるって連絡は入れといた。
  あとは、向こうが問題にするかどうか・・・だけど」
 「せんだろう」「俺も同意見。ま、とりあえず、明日、隊長に報告するから。いいね?」「・・・ああ」
・小牧が帰ったあと、堂上は郁をベッドに寝かせる
 離れようとしたら、郁が堂上の服を掴んでいる
 寝言で「教官・・・」とか呟かれて、ますます動くに動けない
 諦めて、添い寝v
・翌朝、堂上は置き出して準備をしていた
・郁が目を覚ます、「もう、時間ですか?」と起きようとするので、止める
・「今日は、班長命令で、お前は休みだ。寝てろ」
・「はい・・・」と郁は布団に潜り込む
・堂上が部屋を出て行った後
 「あ、このお布団、堂上教官のにおいがする・・・v」




んーと。オチをどうつけるかな(苦笑)

2007.12.25 Tuesday

嫉妬。

 堂上は手塚とバディを組んで、図書館内を哨戒していた。
 小中学校も冬休みの期間に突入したこともあり、館内はいつにも増して人が多い。特に子供が走りまわっているのが目に付いた。
「まったく、子供は元気だな」
 郁だったなら、「館内で走るなー!」と叫んでいくところだろう。止めるために追いかけているのか、一緒にはしゃいでいるのかわからないくらいだ。だが、隣に並ぶ手塚は、堂上と同じように子供の動きを目で追っただけだった。
 子供たちのところには図書館員が駆け寄っていったので、堂上も再び館内をぐるりと見渡した。
 そしてそこに見知った顔を見つけてぎくりとする。
「・・・手塚、しばらく頼む」
「え? あ、はい」
 手塚の返事も待たずに、堂上はその人物に駆け寄った。
 近付いてくる堂上に気づいて、手まで振っている。その手をがしっと掴んで、引き摺るように人気の少ない廊下へ移動した。
「何で、お前がこんなところにいるんだ!」
「痛いなぁ。もぉ、乱暴なんだから」
「本なんか読まないヤツが、なんで図書館にいる」
「ひっどーい。お兄ちゃんが帰ってきてくれないから会いにきたんじゃない」
 ぷうっと頬を膨らませているのは、堂上の妹・遥だった。
 少し年が離れているため、両親も堂上もついつい甘やかし気味になってしまったようで。少々、ワガママに育った感が否めない。
 実家まではさほど遠くないのだが、土日はおろか盆も正月もほとんど帰省していなかった。それくらい仕事に打ち込んでいたといえば聞こえはいいが、結局のところ無精なだけだ。
「あー、悪かった」
 ぽんぽんと頭を撫でて宥めると、ようやく表情を緩ませた。
「母さんたちは、元気か?」
「煩いくらいに元気よ。特にお母さんはね」
「・・・だろうな」
 先日、正月には帰れないと連絡を入れたとき、電話口に出たのは母親だった。その後、数分間、堂上が口を挟めないほどに捲くし立てられたのを思い出す。やれやれ、いつまでたっても親にとっては子は子らしい。
「で、お前は? 仕事はどうした」
「・・・お兄ちゃん、曜日の感覚ないでしょ」
「ん?」
「今日、土曜日だよ」
「・・・ああ、そうか」
 遥の指摘に堂上が苦笑する。土日祝日関係なしのローテーションをしていると、曜日の感覚は薄れていく。普段より利用者が多いなという程度しか変化はないし、良化特務機関が日曜だから休みということもないのだから。
 しばらくの間、最近はどうだというような他愛もない話をしていた。
 すると、遥の視線がふっと一点で止まった。
 それを追って振り返ると、そこに立ち止まっている郁の姿を見つけた。
「ああ、笠原」
 ついでだと遥を紹介しようかと思ったが、堂上と目が合ったtとたんに、郁はくるりと踵を返して走り去ってしまった。
「・・・なんだ、あいつ?」
 意味不明の行動に、いつもの仏頂面になっていたようで。遥は堂上と走り去った郁とを何度か交互に眺めていたが。
「・・・お兄ちゃん、今の人、彼女?」
 思わぬ発言に、ぶっと吹き出してしまう。
 何も言ってないのに、なぜわかるんだ?
「いや、あいつは・・・」
 部下だとでも言って誤魔化すのか?
 今、誤魔化しても、いつかは知れること。
「・・・彼女なんだったら、追い掛けたほうがいいよ?」
「え?」
「・・・うん。多分、あの人、誤解したと思う」
「誤解? 何を?」
「あたしとお兄ちゃんの関係」
 淡々と説明される言葉に、何を言ってると反発してしまう。
 自分と妹との関係を、どう誤解するというのだ。
「・・・だって、あの人、あたしが妹だって知らないでしょ?」
「あ・・・」
 そんな当たり前のことを、指摘されるまで気づかなかった。
「今の状況だけ見るなら、彼氏が別の女と仲良く話してるっていうのは、彼女にとっては、かなりショックだと思うけど?」
 妹相手だからと何も考えずに話し込んでいたが、考えが足りなかった。
 ええい。くそっ。
 がしがしと頭を掻いて遥から視線を逸らした。
「・・・追い掛けないの?」
「あいつが本気で逃げたら、俺は追いつけん」
 陸上部だったこともあって、足では堂上も、手塚でさえも敵わない。思わず本音が出てしまったが、遥は「女心がわかってないわねー」と、呆れ果てた。
「あのね、この場合、『彼氏が追いかけてきてくれる』っていうことが大事なの。ほら、追いかけなさいよ!」
 ぐいぐいと背中を押されてしまい、戸惑いながらも「すまん」と声をかけて、郁が消えた方向へと走り出した。
 今更、追いつけるはずもない。
 また、どこかに隠れて泣いているのか?
 だとしたら、今度はどこだ?
 かくれんぼよろしく、思いもよらないところに逃げ込むヤツだ。まったく、世話が焼ける。


 今日の館内警備でバディを組んでいた小牧が毬江からのメールで「ちょっと、ごめん」と抜け出した。
 二人をウォッチングしている郁としては、「どうぞ」とにこやかに送り出してから、後でそっと閲覧室を覗き見る魂胆でいた。
「笠原、図書館の方に行くなら、これを堂上に渡してくれ」
「はい」
 途中ですれ違った玄田にファイルを渡され、それを抱えて廊下を歩いていった。
 図書館裏の職員用通用口から入り、来館者用のトイレの前を通っていくと、その向こうが閲覧室になる。
 トイレに出入する来館者の波からはずれた壁側に、上官である堂上がいた。
 だが、堂上は一人ではなかった。
 バディを組んでいるはずの手塚ではなく、堂上よりももっと小柄な女性・・・。
 つい、その女性に視線が行ってしまった。職質をかけている様子でもない。
 そうではなくて、逆に――
 考えをめぐらそうとしていた矢先、ふいにその女性と目が合った。目が合ったとたんに、ふっと笑われたような気がした。
 あの子、あたしが堂上教官を見てることに気づいてる。
 どきんと胸が鳴った。
 彼女の視線に気づいてか、堂上も振り返った。体ごと向きを変えたので、彼女の手が堂上の腕を掴んでいるところまで見えてしまった。
「ああ、笠原」
 何で?
 そこで、何事もなさそうに笑ってるの?
 ぐっと手にしていたファイルを握り締めると、こちらへ一歩踏み出した堂上の足音を合図に、郁は回れ右をしてダッシュした。
 嫌だ。
 見たくない。
 好きだと自覚してからずっと、自分の中に蟠っている黒い感情。
 恋人だと言われても、それで安心なんかできない。
 自分以外の女性、誰とも話さないでなんて、無理なことだとわかっているのに、そんなことさえ思ってしまう。
 図書館の建物を出て、どれくらいダッシュしただろう。これ以上は、もう無理、と歩調を緩める。ほとんど無呼吸で走っていたようで、体中が酸素を求めているようだ。はあはあと大きく息を吸いながら、じわじわとせりあがってくる涙を堪える。だが、一向に止まる気配もない。
 諦めて、どこか逃げ込む場所を探す。玄田隊長、小牧教官、ごめんなさい。少しだけ、さぼらせて。
 絶対に人が来ないところ・・・。
 真昼の図書基地は、どこを見ても人だらけ。図書館側に戻るのも嫌だし。寮の部屋へ逃げ帰ろうかとも考えた。
 そして、一箇所だけ、誰も入ってこない部屋を思い出した。
 その部屋に入るまでは、人に会う確率は高いけれど、入ってしまえばこっちのもの。
 ぐっと歯を喰いしばって、郁は何事もなかったかのように平常心を装いながら、図書特殊部隊の建物に入った。
「笠原、休憩か?」
「はい。ちょっと」
 行く先々で声をかけられたけれど、にっこりと笑顔を浮かべて、通り過ぎる。
 やだなぁ。あたし、こんな時でも笑えるんだ・・・。
 作り笑いが上手くなっていく自分を苦々しく思いながら、会議室や事務室の並ぶ廊下を足早に駆ける。
 あと、もう少し。あの角を曲がれば・・・。
 女子更衣室。
 郁が特殊部隊に配属されたことをきっかけに作られた部屋は、目下のところ郁しか使っていない。ここならば鍵もかけれるし、誰かが入ってくることもない。だけど、その角までが遠い。
 駆け出しそうになる心を抑え、気取られないように歩く。
 あと、2メートル、1メートル・・・
「笠原っ!」
 カウントダウンをしはじめた時、後ろから声が響いた。
 うそっ。何で追いかけてくるのよ!
 周囲にいた隊員から笑い声があがっている。
 あ、また怒られてると思われてるんだろうな・・・。
 やだ、もう。来ないでよっ!
 角を曲がり、更衣室のドアノブに手をかけた瞬間、逆の手をぐいっと掴まれた。そのまま力任せに引き寄せられる。
「笠原っ!」
「離してくださいっ」
 力技ならば郁も負けていない。堂上の手を振り払って壁側に逃げる。
 全力で走ってきたのか、堂上は少し息が上がっている。この期に及んで、探してくれたんだなどと嬉しくなってしまう。
 ふっと気が緩んで、堪えていた涙が頬を伝った。
 見られたくなかったのに。
 だが、一度溢れ出した涙は、もう止まらなくて。ぎょっとしている堂上から視線を逸らすように俯いて泣き続けた。
「・・・郁」
 こんな時だけ、名前で呼んだりしないで。
「あたしのことなんか、ほっといてください」
 更衣室のドアはすぐ横だ。逃げ込もうと動いたとたんに顔の前を何かが横切った。
 ダンッと大きな音が響く。堂上が壁に手をついて、進路を遮っている。
「ほっとけるか、バカ」
 さっきまで、この腕に他の女の子が触れていたのかと思うと、触りたくもない。だが、堂上は更に逃げようとする郁の手を掴んでくる。
「汚らわしい手で触らないで! あたしなんかほっといて、誰とでもいちゃいちゃしたらいいでしょ!」
「お前なぁ・・・」
 子供の駄々みたい。
 言いながら、自分でも呆れてしまう。でも、ぐちゃぐちゃと蟠る感情は消えなくて。そのどす黒い感情は重く心に広がっていく。
「あたしなんか、可愛くないし。ガキだし。教官より大きいし。全然、似合いじゃないことくらい、わかってます。だから、教官が他の人を好きになっても文句なんか言えません」
「勝手な早とちりをするな」
「嫌いになったなら、そう言ってください。あたし、諦めますから」
「だからっ!」
 喚き続ける郁に堂上はちっと小さく舌打ちして、強引に唇を重ねてきた。
 逃げようともがいても、堂上の力のほうが勝っていて、身動きできない。
 次第に体中が火照ってくる。膝に力が入らなくなって、がくりと廊下に座り込んだ。それでようやく唇が開放された。
 堂上は郁の正面に跪くと、再び唇を重ねた。
 もう抵抗する力も、投げかける言葉も失くして、ぼうっとされるがままになっていた。
「・・・人が来たらどうするんですか」
「かまわん」
 人目くらい気にしてほしいんですけど、と郁は心の中で毒づいた。
 堂上はそのまま郁の頭を撫でて、涙を拭ってくれた。
「・・・あの人は?」
 怒っている雰囲気ではなさそうなので、おずおずと聞いてみる。
「ん? ああ、遥か」
 うわー、呼び捨てなんだ・・・と、胸が軋む。
 堂上はくすりと笑って、むにっと郁の頬をつまむ。
「あれは妹だ」
「え?」
「俺の妹。堂上遥だ」
「・・・・えええええーーーーっ!」
 さっきまでの涙が一気に吹き飛んでしまった。
「え? うそ? ちょっと待って!」
 うわっ。それじゃあ、あたしってば、妹さんになんて失礼な態度を!
 睨んだような気もする。挨拶するどころか、逃げ出すなんて!
「あいつは、お前のこと俺の彼女だって一発でわかったみたいだぞ」
「やだっ。それ、追い討ち!」
 彼女として、第一印象、最悪!
「・・・まだ帰ってないと思うから、会っていくか?」
「え? あ、でも」
 赤い目を見れば、泣いたってことはバレてしまう。それに化粧だって落ちてるに決まってる。
「・・・化粧、直すなら待ってるぞ。どうせ、そのままじゃ仕事にも戻れんだろ」
 郁の思考を先読みされてしまい、かーっとまた赤くなる。
「五分ください!」
「おーおー、気が済むまでやってこい」
 立ち上がって宣言した郁に、堂上はしゃがんだままでぱしっとお尻を叩かれた。
 更衣室に逃げ込んで、ばしゃばしゃと顔を洗う。訓練の後に館内業務をすることもあるので、更衣室にも一式化粧品類を置いていて助かった。
 泣き腫らした目を冷やして、再び化粧をしはじめた郁の手は、緊張で震えていた。

 盛大に聞こえてくる水音に、

2007.12.12 Wednesday

月夜の夢

 郁は夢を見ていた。
 なぜ夢だとわかったかというと、中学生の頃に死んだはずの祖母が出てきたからだった。
「郁も大きくなったねぇ」
 同居していなかった祖母とは、年に数回会うだけで。その度にその言葉を言われた。
 ぐんぐんと伸びていく身長を気にしていたときだったから、祖母の言葉には素直には頷けなかった。
「でも、あたし、クラスの男子より大きいんだよ?」
「そうかい? でも、郁が大きくなったのには、それなりの理由があるはずだよ」
「理由?」
「そうさ。人にはね、何も無意味なことなんて起きないんだよ。いつか必要になる日がくるから、大きくなったんだよ」
「そうかなぁ・・・」
 祖母の家は、住所こそ関東のものだけれども、昭和初期にタイムスリップしたような田舎の風景が広がっていた。田んぼに畑、裏山には誰が掘ったのかわからない洞窟まである(祖母は確か、野菜を保存する室だと言ったけれど、それが何なのかは郁にはよくわからなかった)。携帯電話も数年前まで圏外だったというから、かなりの場所だ。
 だが、郁は祖母の家が好きだった。のんびりとした時間が流れていて、ゆっくりと本が読める。兄達と遊ぶにも、車や不審者の心配をすることなく、何時間でも野山を駆け回った。

 祖母が死んだ時、一番泣いたのは郁だった。
 兄達は、もう人の死を受け入れるだけの年齢になっていたし、親類の中では郁が一番年下だったせいもある。
 優しく郁を撫でてくれた手からは、温もりが消えていて、郁は葬儀の間中、泣きじゃくっていた。

 目を覚ますと、郁の瞳には涙が残っていた。
 夢を見て泣くなんて、子供みたい・・・。
 涙を拭いながら寝返りを打つと、すぐ横に大きな背中があった。堂上の背中だ。どうやら背中合わせで眠っていたらしい。
 ねぇ、おばあちゃん。あたし、大好きな人より身長が大きいんだけど。これって、やっぱり意味があることなのかなぁ・・・。
 立ち上がれば、自分よりも低い位置になる背中だけれども、郁の何倍も逞しくて広い。
 何度、この背中に焦がれただろう。
 そっと手を伸ばして、背中に触れる。そこから温もりが伝わってきて、冷えた郁の心に広がっていった。
 背中に縋りつくと、堂上も目を覚ましたのか身じろぎした。
「郁? 起きてるのか?」
「ん・・・」
 堂上も寝返りを打って、郁を正面から抱き締めてくれた。
 まだ涙が残っているから、顔を上げることができない。見られないように、堂上の胸に顔を埋めた。
「・・・どうした? 怖い夢でも見たのか?」
「そんな子供じゃありません」
 別に怖い夢というわけではない。郁は拗ねるような声で誤魔化した。
 背中に回されていた腕は、やがて郁の頭をぽんぽんと軽く叩いてくれる。
 その手が、祖母の手と重なった。
 ああ、だから、あたしは・・・。
 初めて会ったときから、堂上のその何気ない仕草が好きだった。
 図書隊に入隊した後も、郁を慰めてくれるとき、堂上は決まって頭を撫でてくれる。
 この優しい手を失くしたら、あたしはおばあちゃんの時以上に、泣くんだろうな。
 そう思ったとたんに、収まりかけていた涙がぶり返した。
 やだ、なんて最悪な想像。考えただけでも身震いがする。
 だが、図書隊は警察や自衛隊よりも、実践経験が高い。特に図書特殊部隊に属する自分達は、図書隊の中でも危険度という意味では一番高いだろう。更にその中でも、堂上は玄田隊長の信頼も厚く、危険な任務を任されやすい。
 いつ、何が起こってもおかしくない環境にいるのだ。
 自然と堂上に回した手に力が篭もった。
 いやだ。失くしたりなんかしない。
 今はまだ同じ班の上司と部下という関係にいるけれど、この先ずっと同じ班でいられるとは限らない。本当に結婚まで進んだとしたら、それこそ別々の班に配属しなおされるだろう。
 いざというとき、隣にいられるとは限らないのだ。
「・・・お前を置いて、どこにも行かないから」
 郁の感情を先読みしたのか、堂上が笑う。
「絶対ですよ。いなくなったら、地獄の果てまででもおいかけますから」
「お前がいうと、実行されそうで怖いな」
「ええ、有言実行がモットーですから、覚悟してくださいね」
 ようやく、ふふっと笑みを漏らして、郁はもう一度、堂上をぎゅっと抱き締めた。

2007.12.11 Tuesday

身長差

 堂上と郁は公休に連れ立って都心にある大型書店にやってきた。
「わぁ、さすがに近くの書店とは品揃えが違いますね」
「この辺じゃ一番大きい書店だからな」
 ビルが丸ごとひとつ、全て書店だ。
「図書館より揃ってたりして」
「んなわけあるか。武蔵野第一図書館は、関東一だぞ。そこらの書店と同じにするな」
「あ、そっか」
 じゃあと、集合時間を決めてそれぞれに別れた。
 同じジャンルの本も読むが、それぞれ好みの傾向がある。気兼ねせずにじっくりと吟味するためにも、別行動を取る。どうせ最後には同じコーナーに集まってくるのだ。それもわかっているが、何かの時のために取り決めておく。
 読書量が多いため、普段は図書館で借りて読んでいるが、気に入った本はやはり手元に置きたい。結局は本好きなんだなと苦笑しつつも、本棚の間を行ったり来たりし、めぼしい本を物色する。
 どんなに読書好きとはいっても、一人の人間が生涯に読める量などたかが知れている。ここや図書館にある膨大な本の中には、誰にも読まれることなく、ただ置かれているだけの本もある。たった一人でも読むかもしれないという目的で作成される本。誰かが読んでくれることを待っている本たち。
 こうやって本を眺めていると、それらの本を取り上げていく特務機関の存在が重く圧し掛かる。

2007.12.11 Tuesday

拍手更に続き

「そういえば、堂上教官と小牧教官って図書大時代からの親友なんですよね?」
「そうだね。同期の中では、一番気が合うやつだね」
 今日は篤さんは玄田隊長と外出している。
 そのため、珍しく昼食時に食堂で小牧教官と一緒になった。柴崎と手塚も同席している。
「昔の話とか、聞きたいなぁ」
 すかさず柴崎が甘えた声を出す。
 うわっ。あんた、またそれネタにするんでしょ。その言葉はご飯と一緒にごくりと飲み込んだ。
「昔の話ねぇ・・・」
「例えば。堂上教官の第一印象とか?」
「ああ、それだったら」
 小牧教官はそこで言葉を切ると、あたしを見てくすっと笑った。
 え、何。何で、そこであたしを見て笑う。
 疑問符を抱いていると、小牧教官が話を続けた。
「ほら、あの身長だろ? 笠原さんとは逆の意味でよくからかわれていてさ。見る人が見れば、堂上がかなり鍛えているのは一目瞭然なんだけど。小さいっていう色眼鏡で見てるヤツはさ、イコール弱い・・・みたいに思っちゃうんだよね」
 確かに。最初はあたしも、チビって言っては甘く見ていた。
「それが、柔道の時にさ。あいつ、有段者って黙ってて、賭けしたんだよ」
「賭け?」
「そう。チビってからかったヤツ等相手に、全員を倒したら・・・みたいにね」
「・・・やりそう」
 思わず呟くと、小牧教官も苦笑した。
「もちろん、堂上の勝ち」
「大人気ないなぁ、堂上教官」
「だろ? まあ、それからはからかうヤツもいなくなったけどね。俺もそれで興味を持ったってわけさ」

2007.12.11 Tuesday

拍手の続き・・・?

 エリートかぁ・・・。
 柴崎の言葉のせいで、ついつい篤さんの言動が気になるようになった。
 図書特殊部隊は、総勢五十名前後で構成されており、四・五人の小班にわけられている。通常の哨戒業務や訓練などはこの班毎にローテーションが組まれている。大規模な出動があれば、所謂『適材適所』で班に関係なく割り振られる。
 十数名いる班長の中でも、確かに篤さんは一番若い。それ故、隊長の使いっぱしりのような仕事もさせられるが、どちらかというと隊長直属の遊撃隊のような扱いで、隊長の右腕と称されたりもしている。元々、自衛隊や警察のように階級や年齢による上下関係は厳しくない。隊長クラスも階級の違いはあるけれど横一列のように扱われている。普段は隊長に暴言を吐いたりもしているけれど、その実、きっちりと上下関係はわきまえている。
 今まで、自分のことと班内のことだけで、手一杯だった。隊長の遊び心で放り込まれたようなものだから、他の事など目もくれずにやってきて、ようやく他班との連携だとか、隊全体を見渡せるようになってきた。
 そうやって見て、ようやくわかる。
「・・・堂上教官って、みんなに遊ばれてる?」
「お前が言うな、お前がっ!」
 一番遊ばれているのはお前だと、噛み付かれてしまった。
 まぁ、『王子様』発言で、自分が散々遊ばれていることは自覚している。
「笠原さん、あれは、可愛がられてるって言うんだよ」
「小牧! いらんこと言うなっ!」
「なるほどー」
「お前も納得するなっ!」
「昔ね、もっと面白いことがあったんだよ」
「小牧ーっ!!」
 噛み付いてくる篤さんを放っておいて、あたしは小牧教官から篤さんの羞恥ネタを披露してもらって、大爆笑した。

2007.12.07 Friday

堂郁いちゃらぶ?

 図書隊員の独身寮は、女子寮と男子寮にわかれている。
 名目上は、女子寮は男子禁制で、男子寮は女子禁制だ。そうは言っても、郁も何度も男子寮の主に堂上の部屋へは入っていた。
 同じ班員として、秘密裏に打合せをすることが多かったし、図書特殊部隊唯一の女子隊員である郁が、「集合」と言われればこそこそと出向いていかなければいけないのも必然だった。
 だが、そのときは小牧や手塚といった同班の面々がいたし、玄田や柴崎が一緒だったりもした。
 だから、堂上の部屋で、二人っきりという状況は初めてかもしれない、と郁は固くなった。
 明日は堂上班は休みだ。二人ででかけようという話をしていて、今はその予定を決めている。
「で? 調べてきたのか?」
「あ、はい」
 以前、車搭載のナビゲーションシステムにおろおろとしてしまったように、郁はどうも地図が苦手だ。紙の地図を見ていても、移動するごとについつい地図を回してしまって、いつも周囲に笑われていた。奥多摩の訓練施設で地図とコンパスを渡されて、山中を歩いた。あのときは、地図とコンパスが必要になるような任務が図書隊にあるのか、と疑問に思ったものだ。だが、現に大阪まで決死のドライブを敢行することになってしまった。
 それからというもの、何かにつけて堂上は郁を試すようなことをする。どこかへ行きたいと言ったら、そこまでの移動方法や移動時間などを調べさせる。デートなんだから、普通に楽しませてくれればいいのに・・・。デート中まで『教官』なんだから。
 堂上も郁も、それぞれ運転免許は取得しているが、自分の車は持っていない。だからデートも公共機関を使うことになる。郁は行きたいと言った場所までの移動方法をメモした紙を堂上の前に差し出した。
 ふむふむと恋人ではなく上官の顔で、チェックしている堂上に恨みがましい視線を送る。
「よし、OKだ。じゃあ、明日は十時に駅だな」
「はい!」
 元気よく返事をすると、ふっと堂上も表情を和らげた。
 どきどき見せてくれる、この柔らかな笑顔がたまらない。
 悩殺される・・・と、慌てて視線をそらし、「じゃあ」と立ち上がろうとした。
「もう少し、いいだろう」
 腕を引っ張られて、がくんとバランスを崩す。さっきまでは少し離れて座っていたのに、いつのまにかすぐ隣に引き寄せられていた。
 ち、近い・・・。
 所謂『恋人同士の距離』なのだろうが、免疫の少ない郁には沸騰ものだ。うわー、こんなどきどきしてるの気づかれた、また笑われるっ。
 がちがちに力が入っているのが分かったのだろう、堂上はぷっと吹き出してから、郁の手を離した。
「男経験がないってのが、ばればれだな」
「ほ、ほっといてください!」
 突かれれば突かれるほど、反発してしまう。
「心配すんな。隣だって空き部屋じゃないんだし。こんなところで襲えるか」
「・・・襲うつもりだったってことですか」
「そりゃあ、男だからな。んでもって、お前は女だし」
 ちょっと膨らみが足らんがなーと、物でも触るように胸を撫でられた。
 キャーッと大声を出しそうになったが、寸でのところで堂上の手に口を塞がれた。
「バカが。男子寮で騒ぐな」
 心底焦った声で言われ、郁もその事実を再認識する。そうだった。一応、女子禁制の場所に踏み込んでいるんだった。
「頼むから、もうちょっと男心をわかれ」
「やたらと触りまくるエロ教官のことなんか、わかりたくありません」

2007.11.30 Friday

人にはそれぞれ違った価値観がある。

 病院を出てから、どうやって寮まで戻ってきたのか、ほとんど記憶に残っていない。
 気がついたら、寮の自室にいた。
 よっぽどにやけていたのか。はたまた、よっぽど真っ赤な顔をしていたのか。
 病院から戻った郁が、部屋の入口で立ち尽くしてしまっていたけれど、柴崎は何も言わなかった。
 あれやこれやと突っ込まれるであろうことは覚悟していたのに、郁はふらふらと自分のベッドに倒れ込んだ。
「あーあ。長期ウォッチングが1つ終わったかぁ・・・」
 ぽつりと呟かれたその一言で、自分も柴崎の調査対象だったのだと気付かされた。
「え、それ、何?」
「入隊時からあれだけ毎日、息の合ったところを見せつけられてたんだから。ギャラリーとしては楽しませてもらったわー」
「突っかかってただけなんだけど・・・」
 今、思えば、何て身の程知らずな。
「ことごとく堂上二正のツボを付けるんだから、これが息が合ってると言わず何と言うのよ」
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