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2008.07.24 Thursday

上司お題

忘れることなど出来ない
 何度目かになるのか、もう数えてもいない。
 査問会を終えて、堂上は寮のベランダにぼんやりと座り込んでいた。
 自らの早まった行動が引き起こしたことだ。言い訳はしない。図書特殊部隊の同僚たちは、面白半分だが堂上の行動を認めてくれている。
 それが、嬉しくもあり、歯痒くもある。
 彼ら全員の立場を自分が危うくしたのだ、と。
 自責の念と自戒を込めて、頭を垂れた。

「堂上? 聞こえてる?」
 突然、頬がひやりとした。
 いつの間に部屋に来ていたのか、小牧が頬に缶ビールをあてていた。
「飲まなきゃやってらんないでしょ?」
 受け取ったものの、今の自分には酒に逃げることすら罪なような気がして、手の中で缶を弄んでいた。
「・・・飲まないの?」
「逃げるわけにはいかない」
「相変わらず、真面目だねぇ・・・」
 くくっと笑って、小牧は自分の缶をあおった。
「ストレス発散しなきゃ、切り抜けられないだろ?」
「別にストレスとは感じていない。規定違反をしたんだ。裁かれるのは当然だ」
「だから真面目だって言うんだよ・・・」
 自分ではそんなに生真面目なつもりはない。
 感情に走りやすく、後先なんて考えていない。
 自分が怪我をするとか、そういったことだけならば、何をやったって自業自得というもので。無茶だろうが結果がすべてとさえ思っていた。
 だが、今回は違う。
 皆を巻き添えにした。
 天から垂らされた糸に図書特殊部隊の全員が繋がっていたのだ。
 それを知らずに、自分の感情だけを優先させて、結局、全員を地獄に落とすことになってしまった。
「・・・見縊られたもんだね」
 小牧の口調がきつくなる。
 ああ、また怒らせてしまった。普段は仏のような顔で物腰も柔らかだけど、本当は堂上などより苛烈な部分を持っている。
「そんな程度で潰れるような連中じゃないだろ? それどころか隊長なんて、件の女子高生を探すとか言って躍起になってるくらいなんだから」
 確かに、お祭り体質の図書特殊部隊には呆れる。
 だが、堂上にはそれすら、自分に負担をかけないための仮面に見える。
「それって、堂上がみんなを信用してないってことだろ?」
 あっさりと痛いところを突かれて、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「一人で戦ってんじゃないよ。俺たちは全員で査問会と戦ってるんだ」
 だから、俺の憂さ晴らしに付き合えよ、と小牧は手を伸ばして堂上の手の中にある缶ビールのプルタブを開けた。
「・・・そう、だな」
 堂上が犯した罪は、図書特殊部隊の罪。一人で背負っているんじゃない。玄田隊長も緒形副隊長も。それだけじゃない、稲嶺司令までもが、堂上の荷物を分かち合ってくれている。
 きっと、一人だったら潰れていた。
 頼もしい仲間がいるのだということを、改めて感じさせられた。

 それからどんな話をしていたのかは覚えていない。
 小牧がうとうとと寝入ってしまった。そっと毛布をかけて、転がった空缶を集めた。
 残っていた缶ビールを片手に、最初にそうしていたようにベランダに座った。
 時刻はとっくに夜半を過ぎていて、更待月がぼんやりと光環をまとって浮かんでいた。
 彼女はあの本を読み終えただろうか。
 良化隊員に立ち向かった凛とした背中。その強気な態度とは裏腹に、安心して泣き崩れた少女。
 彼女が守った本は、今、彼女の心を満たしているだろうか。
 あれからずっと、そんなことばかり考えている。
 もう二度と会うことはないだろうけれど、多分、自分の人生を変えたあの少女を。
 忘れることなど出来ない、と思う。

 あんな少女が、恐怖に震えながらも戦わなければならない。
 そんな社会は、間違っている。
 いつの日か、必ず。それを変えてみせる。

 そう心に誓って、堂上は残りのビールを飲み干した。
 まずは、査問会。
 何を言われようとも、耐え抜いてやる。仲間たちと一緒に。





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堂郁ったら、堂郁なんです!>言い張ってみる

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