■ ■ ■ 上司お題
何度目かになるのか、もう数えてもいない。
査問会を終えて、堂上は寮のベランダにぼんやりと座り込んでいた。
自らの早まった行動が引き起こしたことだ。言い訳はしない。図書特殊部隊の同僚たちは、面白半分だが堂上の行動を認めてくれている。
それが、嬉しくもあり、歯痒くもある。
彼ら全員の立場を自分が危うくしたのだ、と。
自責の念と自戒を込めて、頭を垂れた。
「堂上? 聞こえてる?」
突然、頬がひやりとした。
いつの間に部屋に来ていたのか、小牧が頬に缶ビールをあてていた。
「飲まなきゃやってらんないでしょ?」
受け取ったものの、今の自分には酒に逃げることすら罪なような気がして、手の中で缶を弄んでいた。
「・・・飲まないの?」
「逃げるわけにはいかない」
「相変わらず、真面目だねぇ・・・」
くくっと笑って、小牧は自分の缶をあおった。
「ストレス発散しなきゃ、切り抜けられないだろ?」
「別にストレスとは感じていない。規定違反をしたんだ。裁かれるのは当然だ」
「だから真面目だって言うんだよ・・・」
自分ではそんなに生真面目なつもりはない。
感情に走りやすく、後先なんて考えていない。
自分が怪我をするとか、そういったことだけならば、何をやったって自業自得というもので。無茶だろうが結果がすべてとさえ思っていた。
だが、今回は違う。
皆を巻き添えにした。
天から垂らされた糸に図書特殊部隊の全員が繋がっていたのだ。
それを知らずに、自分の感情だけを優先させて、結局、全員を地獄に落とすことになってしまった。
「・・・見縊られたもんだね」
小牧の口調がきつくなる。
ああ、また怒らせてしまった。普段は仏のような顔で物腰も柔らかだけど、本当は堂上などより苛烈な部分を持っている。
「そんな程度で潰れるような連中じゃないだろ? それどころか隊長なんて、件の女子高生を探すとか言って躍起になってるくらいなんだから」
確かに、お祭り体質の図書特殊部隊には呆れる。
だが、堂上にはそれすら、自分に負担をかけないための仮面に見える。
「それって、堂上がみんなを信用してないってことだろ?」
あっさりと痛いところを突かれて、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「一人で戦ってんじゃないよ。俺たちは全員で査問会と戦ってるんだ」
だから、俺の憂さ晴らしに付き合えよ、と小牧は手を伸ばして堂上の手の中にある缶ビールのプルタブを開けた。
「・・・そう、だな」
堂上が犯した罪は、図書特殊部隊の罪。一人で背負っているんじゃない。玄田隊長も緒形副隊長も。それだけじゃない、稲嶺司令までもが、堂上の荷物を分かち合ってくれている。
きっと、一人だったら潰れていた。
頼もしい仲間がいるのだということを、改めて感じさせられた。
それからどんな話をしていたのかは覚えていない。
小牧がうとうとと寝入ってしまった。そっと毛布をかけて、転がった空缶を集めた。
残っていた缶ビールを片手に、最初にそうしていたようにベランダに座った。
時刻はとっくに夜半を過ぎていて、更待月がぼんやりと光環をまとって浮かんでいた。
彼女はあの本を読み終えただろうか。
良化隊員に立ち向かった凛とした背中。その強気な態度とは裏腹に、安心して泣き崩れた少女。
彼女が守った本は、今、彼女の心を満たしているだろうか。
あれからずっと、そんなことばかり考えている。
もう二度と会うことはないだろうけれど、多分、自分の人生を変えたあの少女を。
忘れることなど出来ない、と思う。
あんな少女が、恐怖に震えながらも戦わなければならない。
そんな社会は、間違っている。
いつの日か、必ず。それを変えてみせる。
そう心に誓って、堂上は残りのビールを飲み干した。
まずは、査問会。
何を言われようとも、耐え抜いてやる。仲間たちと一緒に。
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堂郁ったら、堂郁なんです!>言い張ってみる
査問会を終えて、堂上は寮のベランダにぼんやりと座り込んでいた。
自らの早まった行動が引き起こしたことだ。言い訳はしない。図書特殊部隊の同僚たちは、面白半分だが堂上の行動を認めてくれている。
それが、嬉しくもあり、歯痒くもある。
彼ら全員の立場を自分が危うくしたのだ、と。
自責の念と自戒を込めて、頭を垂れた。
「堂上? 聞こえてる?」
突然、頬がひやりとした。
いつの間に部屋に来ていたのか、小牧が頬に缶ビールをあてていた。
「飲まなきゃやってらんないでしょ?」
受け取ったものの、今の自分には酒に逃げることすら罪なような気がして、手の中で缶を弄んでいた。
「・・・飲まないの?」
「逃げるわけにはいかない」
「相変わらず、真面目だねぇ・・・」
くくっと笑って、小牧は自分の缶をあおった。
「ストレス発散しなきゃ、切り抜けられないだろ?」
「別にストレスとは感じていない。規定違反をしたんだ。裁かれるのは当然だ」
「だから真面目だって言うんだよ・・・」
自分ではそんなに生真面目なつもりはない。
感情に走りやすく、後先なんて考えていない。
自分が怪我をするとか、そういったことだけならば、何をやったって自業自得というもので。無茶だろうが結果がすべてとさえ思っていた。
だが、今回は違う。
皆を巻き添えにした。
天から垂らされた糸に図書特殊部隊の全員が繋がっていたのだ。
それを知らずに、自分の感情だけを優先させて、結局、全員を地獄に落とすことになってしまった。
「・・・見縊られたもんだね」
小牧の口調がきつくなる。
ああ、また怒らせてしまった。普段は仏のような顔で物腰も柔らかだけど、本当は堂上などより苛烈な部分を持っている。
「そんな程度で潰れるような連中じゃないだろ? それどころか隊長なんて、件の女子高生を探すとか言って躍起になってるくらいなんだから」
確かに、お祭り体質の図書特殊部隊には呆れる。
だが、堂上にはそれすら、自分に負担をかけないための仮面に見える。
「それって、堂上がみんなを信用してないってことだろ?」
あっさりと痛いところを突かれて、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「一人で戦ってんじゃないよ。俺たちは全員で査問会と戦ってるんだ」
だから、俺の憂さ晴らしに付き合えよ、と小牧は手を伸ばして堂上の手の中にある缶ビールのプルタブを開けた。
「・・・そう、だな」
堂上が犯した罪は、図書特殊部隊の罪。一人で背負っているんじゃない。玄田隊長も緒形副隊長も。それだけじゃない、稲嶺司令までもが、堂上の荷物を分かち合ってくれている。
きっと、一人だったら潰れていた。
頼もしい仲間がいるのだということを、改めて感じさせられた。
それからどんな話をしていたのかは覚えていない。
小牧がうとうとと寝入ってしまった。そっと毛布をかけて、転がった空缶を集めた。
残っていた缶ビールを片手に、最初にそうしていたようにベランダに座った。
時刻はとっくに夜半を過ぎていて、更待月がぼんやりと光環をまとって浮かんでいた。
彼女はあの本を読み終えただろうか。
良化隊員に立ち向かった凛とした背中。その強気な態度とは裏腹に、安心して泣き崩れた少女。
彼女が守った本は、今、彼女の心を満たしているだろうか。
あれからずっと、そんなことばかり考えている。
もう二度と会うことはないだろうけれど、多分、自分の人生を変えたあの少女を。
忘れることなど出来ない、と思う。
あんな少女が、恐怖に震えながらも戦わなければならない。
そんな社会は、間違っている。
いつの日か、必ず。それを変えてみせる。
そう心に誓って、堂上は残りのビールを飲み干した。
まずは、査問会。
何を言われようとも、耐え抜いてやる。仲間たちと一緒に。
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堂郁ったら、堂郁なんです!>言い張ってみる
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