■ ■ ■ 堂郁いちゃらぶ?
図書隊員の独身寮は、女子寮と男子寮にわかれている。
名目上は、女子寮は男子禁制で、男子寮は女子禁制だ。そうは言っても、郁も何度も男子寮の主に堂上の部屋へは入っていた。
同じ班員として、秘密裏に打合せをすることが多かったし、図書特殊部隊唯一の女子隊員である郁が、「集合」と言われればこそこそと出向いていかなければいけないのも必然だった。
だが、そのときは小牧や手塚といった同班の面々がいたし、玄田や柴崎が一緒だったりもした。
だから、堂上の部屋で、二人っきりという状況は初めてかもしれない、と郁は固くなった。
明日は堂上班は休みだ。二人ででかけようという話をしていて、今はその予定を決めている。
「で? 調べてきたのか?」
「あ、はい」
以前、車搭載のナビゲーションシステムにおろおろとしてしまったように、郁はどうも地図が苦手だ。紙の地図を見ていても、移動するごとについつい地図を回してしまって、いつも周囲に笑われていた。奥多摩の訓練施設で地図とコンパスを渡されて、山中を歩いた。あのときは、地図とコンパスが必要になるような任務が図書隊にあるのか、と疑問に思ったものだ。だが、現に大阪まで決死のドライブを敢行することになってしまった。
それからというもの、何かにつけて堂上は郁を試すようなことをする。どこかへ行きたいと言ったら、そこまでの移動方法や移動時間などを調べさせる。デートなんだから、普通に楽しませてくれればいいのに・・・。デート中まで『教官』なんだから。
堂上も郁も、それぞれ運転免許は取得しているが、自分の車は持っていない。だからデートも公共機関を使うことになる。郁は行きたいと言った場所までの移動方法をメモした紙を堂上の前に差し出した。
ふむふむと恋人ではなく上官の顔で、チェックしている堂上に恨みがましい視線を送る。
「よし、OKだ。じゃあ、明日は十時に駅だな」
「はい!」
元気よく返事をすると、ふっと堂上も表情を和らげた。
どきどき見せてくれる、この柔らかな笑顔がたまらない。
悩殺される・・・と、慌てて視線をそらし、「じゃあ」と立ち上がろうとした。
「もう少し、いいだろう」
腕を引っ張られて、がくんとバランスを崩す。さっきまでは少し離れて座っていたのに、いつのまにかすぐ隣に引き寄せられていた。
ち、近い・・・。
所謂『恋人同士の距離』なのだろうが、免疫の少ない郁には沸騰ものだ。うわー、こんなどきどきしてるの気づかれた、また笑われるっ。
がちがちに力が入っているのが分かったのだろう、堂上はぷっと吹き出してから、郁の手を離した。
「男経験がないってのが、ばればれだな」
「ほ、ほっといてください!」
突かれれば突かれるほど、反発してしまう。
「心配すんな。隣だって空き部屋じゃないんだし。こんなところで襲えるか」
「・・・襲うつもりだったってことですか」
「そりゃあ、男だからな。んでもって、お前は女だし」
ちょっと膨らみが足らんがなーと、物でも触るように胸を撫でられた。
キャーッと大声を出しそうになったが、寸でのところで堂上の手に口を塞がれた。
「バカが。男子寮で騒ぐな」
心底焦った声で言われ、郁もその事実を再認識する。そうだった。一応、女子禁制の場所に踏み込んでいるんだった。
「頼むから、もうちょっと男心をわかれ」
「やたらと触りまくるエロ教官のことなんか、わかりたくありません」
名目上は、女子寮は男子禁制で、男子寮は女子禁制だ。そうは言っても、郁も何度も男子寮の主に堂上の部屋へは入っていた。
同じ班員として、秘密裏に打合せをすることが多かったし、図書特殊部隊唯一の女子隊員である郁が、「集合」と言われればこそこそと出向いていかなければいけないのも必然だった。
だが、そのときは小牧や手塚といった同班の面々がいたし、玄田や柴崎が一緒だったりもした。
だから、堂上の部屋で、二人っきりという状況は初めてかもしれない、と郁は固くなった。
明日は堂上班は休みだ。二人ででかけようという話をしていて、今はその予定を決めている。
「で? 調べてきたのか?」
「あ、はい」
以前、車搭載のナビゲーションシステムにおろおろとしてしまったように、郁はどうも地図が苦手だ。紙の地図を見ていても、移動するごとについつい地図を回してしまって、いつも周囲に笑われていた。奥多摩の訓練施設で地図とコンパスを渡されて、山中を歩いた。あのときは、地図とコンパスが必要になるような任務が図書隊にあるのか、と疑問に思ったものだ。だが、現に大阪まで決死のドライブを敢行することになってしまった。
それからというもの、何かにつけて堂上は郁を試すようなことをする。どこかへ行きたいと言ったら、そこまでの移動方法や移動時間などを調べさせる。デートなんだから、普通に楽しませてくれればいいのに・・・。デート中まで『教官』なんだから。
堂上も郁も、それぞれ運転免許は取得しているが、自分の車は持っていない。だからデートも公共機関を使うことになる。郁は行きたいと言った場所までの移動方法をメモした紙を堂上の前に差し出した。
ふむふむと恋人ではなく上官の顔で、チェックしている堂上に恨みがましい視線を送る。
「よし、OKだ。じゃあ、明日は十時に駅だな」
「はい!」
元気よく返事をすると、ふっと堂上も表情を和らげた。
どきどき見せてくれる、この柔らかな笑顔がたまらない。
悩殺される・・・と、慌てて視線をそらし、「じゃあ」と立ち上がろうとした。
「もう少し、いいだろう」
腕を引っ張られて、がくんとバランスを崩す。さっきまでは少し離れて座っていたのに、いつのまにかすぐ隣に引き寄せられていた。
ち、近い・・・。
所謂『恋人同士の距離』なのだろうが、免疫の少ない郁には沸騰ものだ。うわー、こんなどきどきしてるの気づかれた、また笑われるっ。
がちがちに力が入っているのが分かったのだろう、堂上はぷっと吹き出してから、郁の手を離した。
「男経験がないってのが、ばればれだな」
「ほ、ほっといてください!」
突かれれば突かれるほど、反発してしまう。
「心配すんな。隣だって空き部屋じゃないんだし。こんなところで襲えるか」
「・・・襲うつもりだったってことですか」
「そりゃあ、男だからな。んでもって、お前は女だし」
ちょっと膨らみが足らんがなーと、物でも触るように胸を撫でられた。
キャーッと大声を出しそうになったが、寸でのところで堂上の手に口を塞がれた。
「バカが。男子寮で騒ぐな」
心底焦った声で言われ、郁もその事実を再認識する。そうだった。一応、女子禁制の場所に踏み込んでいるんだった。
「頼むから、もうちょっと男心をわかれ」
「やたらと触りまくるエロ教官のことなんか、わかりたくありません」
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