■ ■ ■ 「海よりも、空よりも」 02
階段から下りてきたところで、片桐は基地長の速水に捕まった。
「片桐、ちょっと若林を呼んで一緒に部屋に来てくれ」
「あ、はい」
当直明けで眠かったが、基地長の命令とあれば文句をつけるわけにもいかず、若林を探しに外へと出た。
片桐と若林は、保大の同期で卒業後最初の配属先こそ分かれたが、特救に来たのも同じ年だった。同期同格ということで、周囲は何かと比べたりもするが、当人たちは苦楽を共に成長してきた同志として、気の合う仲間として過ごしてきた。
「若ー!」
訓練の指揮をしている若林を見つけ、声をかける。
「何や」
「基地長が呼んでる」
「・・・そか。ほな、お前ら、このまま続けとれよ!」
部下たちに指示を残して、片桐の隣まで駆けてくる。片桐よりも少し長身で、覗くように見下ろしてくる。
「基地長、何やて?」
「さあ? 呼んでこいって言われただけで用件まで聞いてない」
並んで基地舎に戻る。
「・・・お前は帰らんのか?」
「俺も呼ばれてる」
「何や、お前もかい」
特にミスを犯した覚えもない。考えたところで仕方がないし、行けばわかる。
「片桐、参りました」
「若林、参りました」
基地長室に入ると、もう前橋たちは帰ったらしく速水一人だった。
「ああ、二人とも悪いね」
「いえ。何かありましたか?」
「さっき、君たちも会ったと思うけど」
速水が言っているのは、前橋と来ていた夏堀のことだろう。
ちょうど事務室に片桐しかいないときにやってきたので、前橋から「俺の部下だ」という話は聞いた。小柄な体を思い出す。海上保安庁でも男女の差別なく採用されるようにはなったが、今でもその数は三百人程度だ。まして、警備・救難の現場では、身体的な差が歴然と出てしまうため女性隊員はほとんどいない。内勤者がほとんどだろう。前橋は航空整備士だ。その前橋の部下なのだから彼女も整備士なのだろう。
「有資格者採用でとった子なんだが」
速水はそれだけ言って、はーっと大きく息を吐いて椅子に沈み込んだ。
「整備士としては特級らしいが、海保の整備士としては、初心者だ。海保の整備士は実際にヘリに乗り込んで潜水士のサポートもできにゃならん」
そこで、と速水は体を起こして机の上で手を組んだ。
「実務の中で修練させねばならん」
「・・・宮城に送ればええやん」
通常、航空整備士を目指す者は、海上保安学校の卒業後に宮城分校での研修を受けることになる。
「まぁ、そう言うな」
「基地長の言いたいこと、わかったで。要は俺らに練習台になれっちゅうんやろ?」
「さすがだな、その通りだ!」
当たっても嬉しくない。若林はそんな顔で憮然とした。
整備士としての腕は認められているようで、それはそれで即戦力として使いたいということか。
隣でぎゃーぎゃーと文句の言葉を喚いている若林を尻目に、片桐はふむと考え込む。
「技術系での採用ならば、整備士専門でいいんじゃないですか? 女性だというならなおさら」
「まあ、そうなんだが・・・」
言葉を濁すあたり、まだ何か自分達には話されていない裏があるとみえる。
「・・・本人の希望だ」
ノックもなしに入ってきた前橋が二人に言い放った。
「夏堀君は?」
「ガルフに熱中しとる」
速水に答えてから、前橋は片桐と若林に一枚の紙を差し出した。覗き込むと、どうやらそれは深空の履歴書のコピーらしい。
まずは出身大学に驚く。東大とは恐れ入った。というか、東大を出たような人間が、なぜ海保に?と疑問になる。
「うわっ。何や、この姉ちゃん」
若林が目を留めたのは、保有資格の欄。
航空整備士の国家資格には、一等と二等がある。保大の者でも在学中に二等を取るものがほとんどだが、深空はすでに一等整備士の資格を保有している。更に無線通信士、危険物取扱者など、見慣れた試験の名前も並んでいる。
「・・・資格マニア?」
「頭でっかちな姉ちゃんが、現場出たい言うんか?」
若林の顔は渋い。特救の任務のほとんどが、生か死かギリギリを争うものだ。強靭な肉体と高いスキル、そして強固な精神力が要求される。いくら知識を詰め込んでも、現場でそれが役に立たなければ、持っていないのと同じなのだ。
『やっと海保に入れたんだし』
さきほど、深空が呟いていた言葉が思い出される。
以前から海保に入ることを望んでいたということか?
それならば一番簡単な方法は、船だろう。海上保安官として巡視船に乗船している女性は多い。
だが、深空は大学も航空宇宙システム工学科ときている。最初から航空整備士を目指していたとしか思えない。
矛盾してる。
「こっちが門司での研修の成績だ」
前橋が更にもう一枚の書類を出した。
有資格者採用で採用された者は、その後、門司にある海上保安学校の分校で、海上保安官として業務の基礎を学ぶ。法律や柔道などの体術、航海に関するもの。
「嫌な姉ちゃんやなぁ・・・」
若林が絶句するのも無理もない。ほとんどの科目が『優』ときている。小柄な体躯からは、か弱い女性という印象しか受けなかったが、どうやら違うらしい。
「上の連中もそこまでだと思ってなかったかもしれんが、拾いもんだと思わんか?」
「・・・育ててみるのも、悪くないかもしれませんね」
本人の気合いも充分だった。
「ただ、ここでいいんですか?」
「日本一厳しいで」
航空基地は羽田だけではなく、国内にいくつかある。特殊救難隊を抱える羽田基地が一番難易度の高い任務をこなす回数が多くなるのはいたしかたない。
「八王子から通える範囲がいいそうだ」
「自宅通勤ですか」
「祖父母しかいないそうでな。やっぱり、心配なんだろ」
家族構成を見ると、確かに父母の名前がない。祖父母と深空の三人暮らしのようだ。
「・・・肝、据わっとるやん」
「若、お前そういうの好きだろ?」
「あかんで! 俺は直ちゃんだけやー!」
「誰もそういうこと言ってないだろ!」
直ちゃんというのは、若林の妻・直美のことだ。高校時代から付き合っていたというラブラブカップルだ。数年前に結婚し、今では子供が二人いる。関西弁の軽いノリで、気軽に女の子にも声をかけているが、実際は子煩悩パパなのだ。
「基地長と前橋さんが育てたいっていうなら、協力します」
「ま、優秀な人材なら、なんぼおってもええしな」
二人が答えると、速水と前橋がぱっと顔を輝かせた。
そんな話があったものの、最初のうちは整備の仕事に慣れることから始めることとなった。
格納庫の中をぱたぱたと走り回っている姿を見かける。青い制服はサイズがなかったのか、少々大きめで、袖など手首のところで何度も折り曲げられていた。海上保安官の募集要項の中に、身長制限がある。女子は150cmだったはずだが、深空がクリアしているのかぎりぎりのように見受けられる。
「片桐さん、おはようございます!」
特殊救難隊の面々にも、顔を合わせれば元気な声で挨拶してくる。
新人としての高感度も抜群で、若い隊員などは、ぼーっと見惚れてしまうのが問題といえば問題だ。もっとも、深空に非はないのだが。
「ああ、おはよう」
「今日はお天気もいいみたいですから、海難は無さそうですね」
「そうだな。俺たちの仕事が暇な方が、世間は幸せだってことだからな」
「高木さんなんかは、うずうずしてるんじゃないですか?」
「・・・困り者だよ、大輔も」
高木大輔は、片桐の三隊に所属する隊員だ。明るいムードメーカーで、現場では頼もしいのだが、海難が起こるのを待ってしまうのが珠に瑕だ。
「三隊は、本日、リペリング訓練に出られるんですよね?」
「その予定だ」
深空が振り返ると、そこには出番を待っているヘリコプターが鎮座している。整備はすでに終了していると見える。
じゃあ、と一旦別れて基地に向かった。
「隊長、おはようございます」
入口のドアのところで、ちょうど追いついてきたのは副隊長の森田幸司だった。六人からなる隊には、他、藤崎剛、高木大輔、水野一輝、城裕一郎がいる。このうち、城が救急救命士だ。
片桐の三隊と、若林の四隊は、六隊の中で平均年齢が最も若い。自衛隊のメディックに倣って25歳以下の潜水士の中から選抜した隊員を同様に若い隊長がまとめている。特殊救難隊の中でも、まだ試行段階の隊である。三隊も片桐が29歳で、副隊長の森田が25歳の誕生日を迎えたばかりだった。
経験不足による判断ミスなどが心配されたが、膨大な過去の海難事故のデータベースを元に様々な想定訓練を重ね、経験不足を補ってきた。訓練と現場は違うという声もあるが、実際の救助の中でも、他の隊に引けをとる部分はない。それ以上に若い柔軟な考え方で、突破口を見出す術も備えている。
「揃ってるな」
「はいっ!」
着替えてミーティングルームに集まっていた隊員に、今日のブリーフィングを開始する。
日々進歩する新しい技術をいち早く取り入れるのも、柔軟なこの隊の特徴のと言える。今日の訓練でも新技術をテスト予定になっていた。
「以上だ。では、09:30にエプロンに集合」
「はい!」
声と共に五人は二階へと駆け上がっていった。装備一式を準備し、外へと出る。
片桐が外へ出ると、今日、機長を務める長谷川が手を挙げた。
「今日は上空も気流が安定しています」
「・・・そうですか。優しい訓練になりそうだな」
「特救さんは厳しい場面での任務ばかりですからね。少し、振っていきますか?」
「いや、今日は新しいことを試す予定なので。最初はそのままで。後半、様子をみていきましょう」
「了解」
長谷川はこの道二十年のベテラン機長だ。片桐が特救に来た頃から共に作業してきた。
「じゃあ、行きますか」
ローターが回され、皆がヘリに乗り込む。動き出そうとしていたところで、慌てた深空が行く手を遮った。何か必死に叫んでいるが、ローター音が邪魔をして聞き取れない。
一緒に乗り込んでいた整備士の西岡が飛び降りて行く。片桐も何事かと後を追った。
「飛んじゃ、駄目です!」
「はあ? 何言ってるんだ、夏堀」
「おかしいんです、このヘリ。だから、飛ばさないでください」
「何だと! それは、俺の整備に文句をつけるってことか!」
西岡がカッとなって深空に掴みかかる。体の小さな深空は胸倉をつかまれただけで、宙に浮きそうになっている。
深空とて馬鹿ではない。それが行く手に仁王立ちしてまで止めたということは、それなりの理由があるのではないか。
「まぁまぁ、西岡さんも落ち着いて」
片桐は二人の間に入り、深空を掴んでいる西岡の手首を握った。片岡の握力は軽く握って70kgだ。ぐっと力を込めると西岡はうっと顔をしかめて手を離した。力尽くというのはあまりやりたくないが、女性相手に力でいくのもいただけない。
「で? どこがおかしいんだ。止めるだけの理由があるんだろうな、夏堀。言ってみろ」
「は、はい」
片桐の口調に深空はびくんと肩を震わせた。
まずい。俺が怖がらせてどうする。
自分の部下を指導するときのようになってしまった。関西弁でおちゃらけたように酷な命令を下す若林と対極にあると言われる片桐の冷静さは、年下の隊員からすれば冷酷とも称される。感情を消した瞳で睨まれれば竦ませるのも簡単だ。
「あの、音が・・・」
「音?」
「はい。ローター音が、いつもと違うんです」
きっぱりと言い切る深空に、片桐は西岡と顔を見合わせてから、ヘリのローターを見上げた。いつもと同じに聞こえる。
「何もおかしくないが?」
「いいえ! おかしいんです! 絶対、変です!」
あまりの剣幕にたじろいでしまい、機長の長谷川も呼ぶ。西岡は格納庫へ向かって、前橋を呼んできた。
三隊の隊員もヘリを降りて、全員でローター音に耳を傾ける。だが、深空が言うような異常な音は感じられない。
「・・・でも・・・」
この場にいる全員がNOと言っているのに、深空は自分の意見を曲げない。我が強いのか、それとも―――。
「わかった。今日はリペは中止だ」
片桐が決断を下すと、部下達からは、えーっと声があがったが、気にせず深空に向き合う。
「夏堀、それだけ言ったんだ。本当に異常がないか、チェックしろ」
「は、はいっ!」
「西岡さん、前橋さん。お願いします」
「すまん、片桐」
「いえ。夏堀も新隊員です。今日は、彼女の訓練ということで」
もしも、本当に異常があり、それに気づかず飛ばしていたとしたら。ここにいる全員が帰らぬ人となるかもしれないのだ。
特救から死者を出してたまるか。しかも、訓練中の事故などもってのほかだ。そのためならば、訓練の一回くらい、棒に振っても何ら支障はない。
この中にいる誰もが気づかないような異常が、深空にはわかるというのか。
一等整備士の腕とやらを確かめさせてもらう、いい機会だ。
ヘリコプターは、一般的にメイン・ローターとテール・ローターの2つが回転することで飛行している。エンジンがメイン・ローターを回すと、揚力を得て機体は浮上する。だが、それだけではトルク効果が発生し、メイン・ローターの回転方向と逆方向へ機体が回転してしまう。それを抑える役割をするのがテール・ローターだ。これら2つのローターの角度を操作することで、航空機にはない複雑な動きができる。
ローターに異常が発生したからといって、即・墜落には繋がらないそうだが、制御不能に陥ることには違いない。
今日は三隊は第二番目の待機部隊だ。隊員たちには横浜の防災基地での訓練へと変更を言い渡し移動させる。片桐も向かってもよかったのだが、自分が深空に整備を言い渡した都合上、立ち会わないわけにはいかないだろう。隊の訓練は副隊長に任せて、片桐も格納庫へと向かった。
格納庫では、前橋と西岡も手伝ってヘリコプター上部のローターをチェックしているところだった。一枚一枚のブレードの取付角度、締め具合など。それらがひとつずつチェックされていく。もちろん、これらのチェックは日々の整備点検項目にもなっているはずで、事故へと繋がる可能性の高い部分を、西岡が見落とすとも思えない。
「・・・トラッキングがずれてないか?」
「え? そんなはずは・・・」
低回転では異常は見られないが、ローターの回転をあげて行くと僅かだがブレードがばたつく感じがある。そこまで行けば、片岡でも音の違いがわかる。
「お前、低回転の時でも音に違いがあるとわかったのか?」
「あ、はい。多分、変な回転をしていたから共振を起こしていたんだと思いますけど・・・」
片桐は前橋と顔を見合わせた。
耳がいい、というそれだけなのだろうか。
「とりあえず、ブレード交換だ」
「はい」
取付に問題は見られないのだから、考えられる原因はブレード自体だ。
新品のブレードに交換し、再度、チェックを行う。
すると、低回転でも深空は納得の顔をした。先ほどと同じように回転数を上げていっても異常は見受けられなかった。
前橋はうーんと唸りながら、取り外したブレードを見比べていた。損傷などは見受けられない。
「ブレードの硬性に差があったんだろう」
「・・・よくあることなんですか?」
「人間が作るもんだからな。全く同じものなんて、二つとできんよ。それを調整するのも、整備士の腕さ」
前橋はそう言って笑うが、それはかなり恐ろしいことではないのか。
機械には一〇〇パーセントということはない。前橋が言うように、あとはどれだけ一〇〇パーセントに近づけることができるかなのだ。
それは、自分達潜水士も同じ。一人でも多くの人を助けるために、少しでも技術の向上を目指すのだ。
人材は集めようと思って集まるものではない。
高いスキルを持ったものが必ずしも海保に入るわけがない。パイロットや航空整備士であれば、大手の航空会社に流れるのが当たり前だろうし、体力に自信がある人間であれば、警察官や自衛隊に流れたりもする。
限られた人と物の中から、最良を選び出し、纏め上げていくのが隊長になった自分の使命であると思っているし、そうしてきたつもりだ。
救える命は、ひとつでも多く救いたい。
レスキューを志すものならば誰しも抱くその思いを、片桐は改めて思い出していた。
「なっちゃん、すごかったな」
「さすが、俺たちの整備士!」
「ちょっと心配だったけどさ、あれならいいんじゃない?」
三隊内では、深空の株がかなり上がったようで、片桐が合流すると深空の話題に花が咲いていた。
格納庫での再整備の結果を話すと、それはさらに盛り上がりをみせていた。
特殊救難隊に入ってくる潜水士は、海でのレスキューにかけては一級なのだが、空に慄くものが時折いる。ヘリからのリペリング降下で何度も尻込みする隊員も多い。特救が出動する場面は海も荒れているが、空も荒れている。普通に飛行機やヘリに乗るのとはわけが違う。
だが、そんな荒れた空でも、ホバリングして機体を安定させる機長には、誰もが一目を置いている。
そして、ヘリに同乗する整備士も、場面ごとで適切な指示を出してくれるからこそ、隊員はレスキューに集中することができる。
プロ同士がそれぞれの仕事をきっちりとこなすことで、特救のレスキューが成り立っているのだ。
最初は、女性の整備士ということで、不満が上がったのは事実だ。
まだ、同乗しての訓練は開始されていないが、彼女の整備士としての腕前は、彼女自身が証明してみせた。
小柄な体格であるから、片桐は力不足を心配していたが、大きな荷物を持って走り回っている様子を見ると、それは杞憂であるようだ。自らヘリへの同乗を志願するくらいなのだから、どんな海保の航空整備士が機上でどんな作業をするのかも知っているのだろう。
「お前等も遅れを取るなよ」
檄を飛ばすと、「はいっ!」と気合いに満ちた声が返ってきた。
突っ走るタイプばかり集めてしまったせいか、他の隊長からは煩がられている隊になっている。
だが、この隊はこれでいい。
運動能力のピークは一般的に二十五歳前後と言われている。能力の低下を自覚すると、人はそれに恐れを抱き、無理をしないようになってしまう。また、家庭を持ち守るものができてしまうと、危険を冒してまでレスキューに挑む心が萎えてしまうのだ。
だからこそ、この三隊と若林が隊長を務める四隊は、わざと二十五歳以下の隊員を集めている。血気盛んで負けん気が強く、向こう見ず。危なっかしい部分はあるが、上手くコントロールしてやれば、恐怖を跳ね除け、高みを目指す最強集団になる。
本来ならば、一年ごとに六つある隊のメンバーを入れ替えているが、試験的に作られた三隊と四隊は、あと一年、このままのメンバーで進めることが基地長と他の隊長たちとの間で合意されている。一人一人のスキルもだが、レスキューは一人でできるものではない。隊員同士の連携、チームワークも試されているのだ。
さらには、自分と若林の隊長としての能力も。
息つく間もない命の現場に、いつまで自分は身を置くのだろう。
ふと考えないでもないが、この道を進むと決めたのは、間違いなく自分である。
頭を振って雑念を追い払うと、片桐は手にしたクリップボードに今日の訓練成果を記入しはじめた。
http://www.pilot-license.com/stuff/stuff-seibi.htm
http://www.pilot-license.com/seibi/seibi-img/sagisaka.pdf
http://www12.plala.or.jp/yoshihara/epconcept/trouble/trouble.htm#trk
http://www.sozaishu.net/txt/archives/2007/02/post_32.html
「片桐、ちょっと若林を呼んで一緒に部屋に来てくれ」
「あ、はい」
当直明けで眠かったが、基地長の命令とあれば文句をつけるわけにもいかず、若林を探しに外へと出た。
片桐と若林は、保大の同期で卒業後最初の配属先こそ分かれたが、特救に来たのも同じ年だった。同期同格ということで、周囲は何かと比べたりもするが、当人たちは苦楽を共に成長してきた同志として、気の合う仲間として過ごしてきた。
「若ー!」
訓練の指揮をしている若林を見つけ、声をかける。
「何や」
「基地長が呼んでる」
「・・・そか。ほな、お前ら、このまま続けとれよ!」
部下たちに指示を残して、片桐の隣まで駆けてくる。片桐よりも少し長身で、覗くように見下ろしてくる。
「基地長、何やて?」
「さあ? 呼んでこいって言われただけで用件まで聞いてない」
並んで基地舎に戻る。
「・・・お前は帰らんのか?」
「俺も呼ばれてる」
「何や、お前もかい」
特にミスを犯した覚えもない。考えたところで仕方がないし、行けばわかる。
「片桐、参りました」
「若林、参りました」
基地長室に入ると、もう前橋たちは帰ったらしく速水一人だった。
「ああ、二人とも悪いね」
「いえ。何かありましたか?」
「さっき、君たちも会ったと思うけど」
速水が言っているのは、前橋と来ていた夏堀のことだろう。
ちょうど事務室に片桐しかいないときにやってきたので、前橋から「俺の部下だ」という話は聞いた。小柄な体を思い出す。海上保安庁でも男女の差別なく採用されるようにはなったが、今でもその数は三百人程度だ。まして、警備・救難の現場では、身体的な差が歴然と出てしまうため女性隊員はほとんどいない。内勤者がほとんどだろう。前橋は航空整備士だ。その前橋の部下なのだから彼女も整備士なのだろう。
「有資格者採用でとった子なんだが」
速水はそれだけ言って、はーっと大きく息を吐いて椅子に沈み込んだ。
「整備士としては特級らしいが、海保の整備士としては、初心者だ。海保の整備士は実際にヘリに乗り込んで潜水士のサポートもできにゃならん」
そこで、と速水は体を起こして机の上で手を組んだ。
「実務の中で修練させねばならん」
「・・・宮城に送ればええやん」
通常、航空整備士を目指す者は、海上保安学校の卒業後に宮城分校での研修を受けることになる。
「まぁ、そう言うな」
「基地長の言いたいこと、わかったで。要は俺らに練習台になれっちゅうんやろ?」
「さすがだな、その通りだ!」
当たっても嬉しくない。若林はそんな顔で憮然とした。
整備士としての腕は認められているようで、それはそれで即戦力として使いたいということか。
隣でぎゃーぎゃーと文句の言葉を喚いている若林を尻目に、片桐はふむと考え込む。
「技術系での採用ならば、整備士専門でいいんじゃないですか? 女性だというならなおさら」
「まあ、そうなんだが・・・」
言葉を濁すあたり、まだ何か自分達には話されていない裏があるとみえる。
「・・・本人の希望だ」
ノックもなしに入ってきた前橋が二人に言い放った。
「夏堀君は?」
「ガルフに熱中しとる」
速水に答えてから、前橋は片桐と若林に一枚の紙を差し出した。覗き込むと、どうやらそれは深空の履歴書のコピーらしい。
まずは出身大学に驚く。東大とは恐れ入った。というか、東大を出たような人間が、なぜ海保に?と疑問になる。
「うわっ。何や、この姉ちゃん」
若林が目を留めたのは、保有資格の欄。
航空整備士の国家資格には、一等と二等がある。保大の者でも在学中に二等を取るものがほとんどだが、深空はすでに一等整備士の資格を保有している。更に無線通信士、危険物取扱者など、見慣れた試験の名前も並んでいる。
「・・・資格マニア?」
「頭でっかちな姉ちゃんが、現場出たい言うんか?」
若林の顔は渋い。特救の任務のほとんどが、生か死かギリギリを争うものだ。強靭な肉体と高いスキル、そして強固な精神力が要求される。いくら知識を詰め込んでも、現場でそれが役に立たなければ、持っていないのと同じなのだ。
『やっと海保に入れたんだし』
さきほど、深空が呟いていた言葉が思い出される。
以前から海保に入ることを望んでいたということか?
それならば一番簡単な方法は、船だろう。海上保安官として巡視船に乗船している女性は多い。
だが、深空は大学も航空宇宙システム工学科ときている。最初から航空整備士を目指していたとしか思えない。
矛盾してる。
「こっちが門司での研修の成績だ」
前橋が更にもう一枚の書類を出した。
有資格者採用で採用された者は、その後、門司にある海上保安学校の分校で、海上保安官として業務の基礎を学ぶ。法律や柔道などの体術、航海に関するもの。
「嫌な姉ちゃんやなぁ・・・」
若林が絶句するのも無理もない。ほとんどの科目が『優』ときている。小柄な体躯からは、か弱い女性という印象しか受けなかったが、どうやら違うらしい。
「上の連中もそこまでだと思ってなかったかもしれんが、拾いもんだと思わんか?」
「・・・育ててみるのも、悪くないかもしれませんね」
本人の気合いも充分だった。
「ただ、ここでいいんですか?」
「日本一厳しいで」
航空基地は羽田だけではなく、国内にいくつかある。特殊救難隊を抱える羽田基地が一番難易度の高い任務をこなす回数が多くなるのはいたしかたない。
「八王子から通える範囲がいいそうだ」
「自宅通勤ですか」
「祖父母しかいないそうでな。やっぱり、心配なんだろ」
家族構成を見ると、確かに父母の名前がない。祖父母と深空の三人暮らしのようだ。
「・・・肝、据わっとるやん」
「若、お前そういうの好きだろ?」
「あかんで! 俺は直ちゃんだけやー!」
「誰もそういうこと言ってないだろ!」
直ちゃんというのは、若林の妻・直美のことだ。高校時代から付き合っていたというラブラブカップルだ。数年前に結婚し、今では子供が二人いる。関西弁の軽いノリで、気軽に女の子にも声をかけているが、実際は子煩悩パパなのだ。
「基地長と前橋さんが育てたいっていうなら、協力します」
「ま、優秀な人材なら、なんぼおってもええしな」
二人が答えると、速水と前橋がぱっと顔を輝かせた。
そんな話があったものの、最初のうちは整備の仕事に慣れることから始めることとなった。
格納庫の中をぱたぱたと走り回っている姿を見かける。青い制服はサイズがなかったのか、少々大きめで、袖など手首のところで何度も折り曲げられていた。海上保安官の募集要項の中に、身長制限がある。女子は150cmだったはずだが、深空がクリアしているのかぎりぎりのように見受けられる。
「片桐さん、おはようございます!」
特殊救難隊の面々にも、顔を合わせれば元気な声で挨拶してくる。
新人としての高感度も抜群で、若い隊員などは、ぼーっと見惚れてしまうのが問題といえば問題だ。もっとも、深空に非はないのだが。
「ああ、おはよう」
「今日はお天気もいいみたいですから、海難は無さそうですね」
「そうだな。俺たちの仕事が暇な方が、世間は幸せだってことだからな」
「高木さんなんかは、うずうずしてるんじゃないですか?」
「・・・困り者だよ、大輔も」
高木大輔は、片桐の三隊に所属する隊員だ。明るいムードメーカーで、現場では頼もしいのだが、海難が起こるのを待ってしまうのが珠に瑕だ。
「三隊は、本日、リペリング訓練に出られるんですよね?」
「その予定だ」
深空が振り返ると、そこには出番を待っているヘリコプターが鎮座している。整備はすでに終了していると見える。
じゃあ、と一旦別れて基地に向かった。
「隊長、おはようございます」
入口のドアのところで、ちょうど追いついてきたのは副隊長の森田幸司だった。六人からなる隊には、他、藤崎剛、高木大輔、水野一輝、城裕一郎がいる。このうち、城が救急救命士だ。
片桐の三隊と、若林の四隊は、六隊の中で平均年齢が最も若い。自衛隊のメディックに倣って25歳以下の潜水士の中から選抜した隊員を同様に若い隊長がまとめている。特殊救難隊の中でも、まだ試行段階の隊である。三隊も片桐が29歳で、副隊長の森田が25歳の誕生日を迎えたばかりだった。
経験不足による判断ミスなどが心配されたが、膨大な過去の海難事故のデータベースを元に様々な想定訓練を重ね、経験不足を補ってきた。訓練と現場は違うという声もあるが、実際の救助の中でも、他の隊に引けをとる部分はない。それ以上に若い柔軟な考え方で、突破口を見出す術も備えている。
「揃ってるな」
「はいっ!」
着替えてミーティングルームに集まっていた隊員に、今日のブリーフィングを開始する。
日々進歩する新しい技術をいち早く取り入れるのも、柔軟なこの隊の特徴のと言える。今日の訓練でも新技術をテスト予定になっていた。
「以上だ。では、09:30にエプロンに集合」
「はい!」
声と共に五人は二階へと駆け上がっていった。装備一式を準備し、外へと出る。
片桐が外へ出ると、今日、機長を務める長谷川が手を挙げた。
「今日は上空も気流が安定しています」
「・・・そうですか。優しい訓練になりそうだな」
「特救さんは厳しい場面での任務ばかりですからね。少し、振っていきますか?」
「いや、今日は新しいことを試す予定なので。最初はそのままで。後半、様子をみていきましょう」
「了解」
長谷川はこの道二十年のベテラン機長だ。片桐が特救に来た頃から共に作業してきた。
「じゃあ、行きますか」
ローターが回され、皆がヘリに乗り込む。動き出そうとしていたところで、慌てた深空が行く手を遮った。何か必死に叫んでいるが、ローター音が邪魔をして聞き取れない。
一緒に乗り込んでいた整備士の西岡が飛び降りて行く。片桐も何事かと後を追った。
「飛んじゃ、駄目です!」
「はあ? 何言ってるんだ、夏堀」
「おかしいんです、このヘリ。だから、飛ばさないでください」
「何だと! それは、俺の整備に文句をつけるってことか!」
西岡がカッとなって深空に掴みかかる。体の小さな深空は胸倉をつかまれただけで、宙に浮きそうになっている。
深空とて馬鹿ではない。それが行く手に仁王立ちしてまで止めたということは、それなりの理由があるのではないか。
「まぁまぁ、西岡さんも落ち着いて」
片桐は二人の間に入り、深空を掴んでいる西岡の手首を握った。片岡の握力は軽く握って70kgだ。ぐっと力を込めると西岡はうっと顔をしかめて手を離した。力尽くというのはあまりやりたくないが、女性相手に力でいくのもいただけない。
「で? どこがおかしいんだ。止めるだけの理由があるんだろうな、夏堀。言ってみろ」
「は、はい」
片桐の口調に深空はびくんと肩を震わせた。
まずい。俺が怖がらせてどうする。
自分の部下を指導するときのようになってしまった。関西弁でおちゃらけたように酷な命令を下す若林と対極にあると言われる片桐の冷静さは、年下の隊員からすれば冷酷とも称される。感情を消した瞳で睨まれれば竦ませるのも簡単だ。
「あの、音が・・・」
「音?」
「はい。ローター音が、いつもと違うんです」
きっぱりと言い切る深空に、片桐は西岡と顔を見合わせてから、ヘリのローターを見上げた。いつもと同じに聞こえる。
「何もおかしくないが?」
「いいえ! おかしいんです! 絶対、変です!」
あまりの剣幕にたじろいでしまい、機長の長谷川も呼ぶ。西岡は格納庫へ向かって、前橋を呼んできた。
三隊の隊員もヘリを降りて、全員でローター音に耳を傾ける。だが、深空が言うような異常な音は感じられない。
「・・・でも・・・」
この場にいる全員がNOと言っているのに、深空は自分の意見を曲げない。我が強いのか、それとも―――。
「わかった。今日はリペは中止だ」
片桐が決断を下すと、部下達からは、えーっと声があがったが、気にせず深空に向き合う。
「夏堀、それだけ言ったんだ。本当に異常がないか、チェックしろ」
「は、はいっ!」
「西岡さん、前橋さん。お願いします」
「すまん、片桐」
「いえ。夏堀も新隊員です。今日は、彼女の訓練ということで」
もしも、本当に異常があり、それに気づかず飛ばしていたとしたら。ここにいる全員が帰らぬ人となるかもしれないのだ。
特救から死者を出してたまるか。しかも、訓練中の事故などもってのほかだ。そのためならば、訓練の一回くらい、棒に振っても何ら支障はない。
この中にいる誰もが気づかないような異常が、深空にはわかるというのか。
一等整備士の腕とやらを確かめさせてもらう、いい機会だ。
ヘリコプターは、一般的にメイン・ローターとテール・ローターの2つが回転することで飛行している。エンジンがメイン・ローターを回すと、揚力を得て機体は浮上する。だが、それだけではトルク効果が発生し、メイン・ローターの回転方向と逆方向へ機体が回転してしまう。それを抑える役割をするのがテール・ローターだ。これら2つのローターの角度を操作することで、航空機にはない複雑な動きができる。
ローターに異常が発生したからといって、即・墜落には繋がらないそうだが、制御不能に陥ることには違いない。
今日は三隊は第二番目の待機部隊だ。隊員たちには横浜の防災基地での訓練へと変更を言い渡し移動させる。片桐も向かってもよかったのだが、自分が深空に整備を言い渡した都合上、立ち会わないわけにはいかないだろう。隊の訓練は副隊長に任せて、片桐も格納庫へと向かった。
格納庫では、前橋と西岡も手伝ってヘリコプター上部のローターをチェックしているところだった。一枚一枚のブレードの取付角度、締め具合など。それらがひとつずつチェックされていく。もちろん、これらのチェックは日々の整備点検項目にもなっているはずで、事故へと繋がる可能性の高い部分を、西岡が見落とすとも思えない。
「・・・トラッキングがずれてないか?」
「え? そんなはずは・・・」
低回転では異常は見られないが、ローターの回転をあげて行くと僅かだがブレードがばたつく感じがある。そこまで行けば、片岡でも音の違いがわかる。
「お前、低回転の時でも音に違いがあるとわかったのか?」
「あ、はい。多分、変な回転をしていたから共振を起こしていたんだと思いますけど・・・」
片桐は前橋と顔を見合わせた。
耳がいい、というそれだけなのだろうか。
「とりあえず、ブレード交換だ」
「はい」
取付に問題は見られないのだから、考えられる原因はブレード自体だ。
新品のブレードに交換し、再度、チェックを行う。
すると、低回転でも深空は納得の顔をした。先ほどと同じように回転数を上げていっても異常は見受けられなかった。
前橋はうーんと唸りながら、取り外したブレードを見比べていた。損傷などは見受けられない。
「ブレードの硬性に差があったんだろう」
「・・・よくあることなんですか?」
「人間が作るもんだからな。全く同じものなんて、二つとできんよ。それを調整するのも、整備士の腕さ」
前橋はそう言って笑うが、それはかなり恐ろしいことではないのか。
機械には一〇〇パーセントということはない。前橋が言うように、あとはどれだけ一〇〇パーセントに近づけることができるかなのだ。
それは、自分達潜水士も同じ。一人でも多くの人を助けるために、少しでも技術の向上を目指すのだ。
人材は集めようと思って集まるものではない。
高いスキルを持ったものが必ずしも海保に入るわけがない。パイロットや航空整備士であれば、大手の航空会社に流れるのが当たり前だろうし、体力に自信がある人間であれば、警察官や自衛隊に流れたりもする。
限られた人と物の中から、最良を選び出し、纏め上げていくのが隊長になった自分の使命であると思っているし、そうしてきたつもりだ。
救える命は、ひとつでも多く救いたい。
レスキューを志すものならば誰しも抱くその思いを、片桐は改めて思い出していた。
「なっちゃん、すごかったな」
「さすが、俺たちの整備士!」
「ちょっと心配だったけどさ、あれならいいんじゃない?」
三隊内では、深空の株がかなり上がったようで、片桐が合流すると深空の話題に花が咲いていた。
格納庫での再整備の結果を話すと、それはさらに盛り上がりをみせていた。
特殊救難隊に入ってくる潜水士は、海でのレスキューにかけては一級なのだが、空に慄くものが時折いる。ヘリからのリペリング降下で何度も尻込みする隊員も多い。特救が出動する場面は海も荒れているが、空も荒れている。普通に飛行機やヘリに乗るのとはわけが違う。
だが、そんな荒れた空でも、ホバリングして機体を安定させる機長には、誰もが一目を置いている。
そして、ヘリに同乗する整備士も、場面ごとで適切な指示を出してくれるからこそ、隊員はレスキューに集中することができる。
プロ同士がそれぞれの仕事をきっちりとこなすことで、特救のレスキューが成り立っているのだ。
最初は、女性の整備士ということで、不満が上がったのは事実だ。
まだ、同乗しての訓練は開始されていないが、彼女の整備士としての腕前は、彼女自身が証明してみせた。
小柄な体格であるから、片桐は力不足を心配していたが、大きな荷物を持って走り回っている様子を見ると、それは杞憂であるようだ。自らヘリへの同乗を志願するくらいなのだから、どんな海保の航空整備士が機上でどんな作業をするのかも知っているのだろう。
「お前等も遅れを取るなよ」
檄を飛ばすと、「はいっ!」と気合いに満ちた声が返ってきた。
突っ走るタイプばかり集めてしまったせいか、他の隊長からは煩がられている隊になっている。
だが、この隊はこれでいい。
運動能力のピークは一般的に二十五歳前後と言われている。能力の低下を自覚すると、人はそれに恐れを抱き、無理をしないようになってしまう。また、家庭を持ち守るものができてしまうと、危険を冒してまでレスキューに挑む心が萎えてしまうのだ。
だからこそ、この三隊と若林が隊長を務める四隊は、わざと二十五歳以下の隊員を集めている。血気盛んで負けん気が強く、向こう見ず。危なっかしい部分はあるが、上手くコントロールしてやれば、恐怖を跳ね除け、高みを目指す最強集団になる。
本来ならば、一年ごとに六つある隊のメンバーを入れ替えているが、試験的に作られた三隊と四隊は、あと一年、このままのメンバーで進めることが基地長と他の隊長たちとの間で合意されている。一人一人のスキルもだが、レスキューは一人でできるものではない。隊員同士の連携、チームワークも試されているのだ。
さらには、自分と若林の隊長としての能力も。
息つく間もない命の現場に、いつまで自分は身を置くのだろう。
ふと考えないでもないが、この道を進むと決めたのは、間違いなく自分である。
頭を振って雑念を追い払うと、片桐は手にしたクリップボードに今日の訓練成果を記入しはじめた。
http://www.pilot-license.com/stuff/stuff-seibi.htm
http://www.pilot-license.com/seibi/seibi-img/sagisaka.pdf
http://www12.plala.or.jp/yoshihara/epconcept/trouble/trouble.htm#trk
http://www.sozaishu.net/txt/archives/2007/02/post_32.html