2007.12.11 Tuesday

身長差

 堂上と郁は公休に連れ立って都心にある大型書店にやってきた。
「わぁ、さすがに近くの書店とは品揃えが違いますね」
「この辺じゃ一番大きい書店だからな」
 ビルが丸ごとひとつ、全て書店だ。
「図書館より揃ってたりして」
「んなわけあるか。武蔵野第一図書館は、関東一だぞ。そこらの書店と同じにするな」
「あ、そっか」
 じゃあと、集合時間を決めてそれぞれに別れた。
 同じジャンルの本も読むが、それぞれ好みの傾向がある。気兼ねせずにじっくりと吟味するためにも、別行動を取る。どうせ最後には同じコーナーに集まってくるのだ。それもわかっているが、何かの時のために取り決めておく。
 読書量が多いため、普段は図書館で借りて読んでいるが、気に入った本はやはり手元に置きたい。結局は本好きなんだなと苦笑しつつも、本棚の間を行ったり来たりし、めぼしい本を物色する。
 どんなに読書好きとはいっても、一人の人間が生涯に読める量などたかが知れている。ここや図書館にある膨大な本の中には、誰にも読まれることなく、ただ置かれているだけの本もある。たった一人でも読むかもしれないという目的で作成される本。誰かが読んでくれることを待っている本たち。
 こうやって本を眺めていると、それらの本を取り上げていく特務機関の存在が重く圧し掛かる。

2007.12.11 Tuesday

拍手更に続き

「そういえば、堂上教官と小牧教官って図書大時代からの親友なんですよね?」
「そうだね。同期の中では、一番気が合うやつだね」
 今日は篤さんは玄田隊長と外出している。
 そのため、珍しく昼食時に食堂で小牧教官と一緒になった。柴崎と手塚も同席している。
「昔の話とか、聞きたいなぁ」
 すかさず柴崎が甘えた声を出す。
 うわっ。あんた、またそれネタにするんでしょ。その言葉はご飯と一緒にごくりと飲み込んだ。
「昔の話ねぇ・・・」
「例えば。堂上教官の第一印象とか?」
「ああ、それだったら」
 小牧教官はそこで言葉を切ると、あたしを見てくすっと笑った。
 え、何。何で、そこであたしを見て笑う。
 疑問符を抱いていると、小牧教官が話を続けた。
「ほら、あの身長だろ? 笠原さんとは逆の意味でよくからかわれていてさ。見る人が見れば、堂上がかなり鍛えているのは一目瞭然なんだけど。小さいっていう色眼鏡で見てるヤツはさ、イコール弱い・・・みたいに思っちゃうんだよね」
 確かに。最初はあたしも、チビって言っては甘く見ていた。
「それが、柔道の時にさ。あいつ、有段者って黙ってて、賭けしたんだよ」
「賭け?」
「そう。チビってからかったヤツ等相手に、全員を倒したら・・・みたいにね」
「・・・やりそう」
 思わず呟くと、小牧教官も苦笑した。
「もちろん、堂上の勝ち」
「大人気ないなぁ、堂上教官」
「だろ? まあ、それからはからかうヤツもいなくなったけどね。俺もそれで興味を持ったってわけさ」

2007.12.11 Tuesday

拍手の続き・・・?

 エリートかぁ・・・。
 柴崎の言葉のせいで、ついつい篤さんの言動が気になるようになった。
 図書特殊部隊は、総勢五十名前後で構成されており、四・五人の小班にわけられている。通常の哨戒業務や訓練などはこの班毎にローテーションが組まれている。大規模な出動があれば、所謂『適材適所』で班に関係なく割り振られる。
 十数名いる班長の中でも、確かに篤さんは一番若い。それ故、隊長の使いっぱしりのような仕事もさせられるが、どちらかというと隊長直属の遊撃隊のような扱いで、隊長の右腕と称されたりもしている。元々、自衛隊や警察のように階級や年齢による上下関係は厳しくない。隊長クラスも階級の違いはあるけれど横一列のように扱われている。普段は隊長に暴言を吐いたりもしているけれど、その実、きっちりと上下関係はわきまえている。
 今まで、自分のことと班内のことだけで、手一杯だった。隊長の遊び心で放り込まれたようなものだから、他の事など目もくれずにやってきて、ようやく他班との連携だとか、隊全体を見渡せるようになってきた。
 そうやって見て、ようやくわかる。
「・・・堂上教官って、みんなに遊ばれてる?」
「お前が言うな、お前がっ!」
 一番遊ばれているのはお前だと、噛み付かれてしまった。
 まぁ、『王子様』発言で、自分が散々遊ばれていることは自覚している。
「笠原さん、あれは、可愛がられてるって言うんだよ」
「小牧! いらんこと言うなっ!」
「なるほどー」
「お前も納得するなっ!」
「昔ね、もっと面白いことがあったんだよ」
「小牧ーっ!!」
 噛み付いてくる篤さんを放っておいて、あたしは小牧教官から篤さんの羞恥ネタを披露してもらって、大爆笑した。
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