2007.03.05 Monday

余命宣言

■余命宣告「ごめんなさい。そろそろ限界です」
(時音ちゃん視点で)
01:余命1ヶ月
入院した時音のところに、良守が顔を出す。
時音は余命3ヶ月と告知を受けていた。元気に振舞っているけれど、良守に「嘘つけ」と気付かれる。
「・・・あと3ヶ月しか生きられないんだって」と、良守に話す。
祖母は、雪村の血が途絶えることに不安を隠しきれないし。
母は、取り乱しつつも受け入れている。
そんな2人には見せられない、時音の本音。
「強がんな」そういって、泣かせてくれた。

02:今、わたしのしたいこと
抗がん剤を投与しているので、自慢の黒髪が抜けていく。
自分が確実に死に向かっているのだと実感させられる。
本当に3ヶ月しか生きられないのだとしたら。
「やりたいことがあるの」
普通の女の子みたいに。旅行とかしてみたい。

03:傍に居てなんていえるわけがない
「つきあってやるよ」
良守は時音のわがままを聞いてくれた。
守っているつもりが、いつの間にか守られていた。
良守の気持ちは、それとなく気付いている。そこにつけこむなんてずるい女ね。
甘えている。傍に居てなんていえるわけがない。

04:ごめんなさい
このまま自分が消えるんだったら。良守に期待を持たせるようなことをしちゃいけない。
そんなことをしたら、この先、良守の人生を狂わせてしまう。
私のことなんて忘れて、前を向いて歩いていってほしい。

05:「死んだら天国に行くのかな? 地獄に行くのかな?」
2人で海に来た。海まではそんなに遠くないのに。何年ぶりだろう。
海水浴という季節でもないし。浜辺に座って、海を眺める。
結界師なんて仕事をしてきたけれど、結局のところ「死後」のことなんてわからない。
「霊」になって、烏森に彷徨い出ていたら、笑ってね、なんて。冗談にもならない。
でも。良守に滅されるのなら、それもいいのかな。

06:せめて天使になりたいな
「くだらねーこと言ってんじゃねーよ」と、一蹴される。
結界師が滅した霊は、闇の世界へと送られると聞いている。
「そんなところに時音を送れるかよ。成仏しねーと、承知しないからな」
「・・・そうだね」

07:涙は枯れたみたいだよ
悲しいという感覚が麻痺してしまっているのかもしれない。
どれくらい泣いたんだろう。
毎晩、毎晩。眠れぬ夜を過ごして。何度も涙で枕を濡らした。
良守は、そんな絶妙なタイミングで病室に来て。何度も涙を拭ってくれた。
泣き虫だった良守が。涙を見せずに。
「時音が、俺の分まで泣いたから、俺の涙は枯れたのかもしれない」

08:今更、涙を流したって
「・・・生きたい。私、もっと生きたいよ」
こんなことになるなら。あれも、これも。もっと、やりたかったことがある。
やっておかなければならなかったことがある。
今更、遅いのはわかっているけど。悔しい。

09:最後のお願い、きいてくれる?
容体が急変する。救急車を呼ぼうとした良守の手を止める。
「最後のお願い、きいてくれる?」
「願い事くらい、いくつだった叶えてやる。最後なんて言うな!」
「・・・キスして」
良守の腕の中で、息を引き取る。

10:さよなら、お元気で
ふわりと、魂が抜け出る。
大泣きしている良守が、そこにいる。
やだな。そんなに泣かないで。
沢山、やりのこしたことはあるけれど。確かに、私は幸せだったんだから。
ありがとう。ずっとそばにいてくれて。
ありがとう。こんな私を愛してくれて。



■死んだ彼女へ「もう振り返らない」
(よっしー視点で)
01:さよならから、何日たった?
夜の烏森。右に斑尾、左に白尾。2匹従えて、ぼんやりと座っている。
「そんなんじゃ、ハニーが安心して休めないだろ?」白尾が叱咤するけど、「んー」と気のない返事。
あれから、何日経ったんだろう?
もう、時間の感覚も、生きているという感覚さえない。

02:君の時間は止まってしまったけれど
リュックの中に、忍ばせている時音の写真。
時折、こっそりと眺めている。
もう、動くことはない時音の時間。
でも、自分達の時間は動いていて、どんどん時音と離れていく気がする。

03:たまに行くお墓にある花
裏山にある墓地に、雪村家・墨村家ともに、代々の墓がある。
時夫の名前の隣に刻まれた「時音」の名前。
ここにしか、時音が生きていたんだと言う証拠がないような気がして、指でなぞってみる。
良守は辛くて、何度かしか来たことがないが。いつも必ず花が添えられている。

04:「わたしが死んだら、お墓の前で宴会してください」
「墓前で泣いたりなんてしないでよ。多分、私はそこになんかいないから」
遺骨は納められているけれど、時音の魂は、一体、どこにあるんだろう?
成仏するって、どういうことなんだろう?
誰か、その答えを知っているんだろうか?

05:笑った彼女が見えた気がした
「良守!」
幻だとわかっている。それでも、目の前に現われた時音に、口元が綻ぶ。

06:何時でも添える花は君の好きだった花
時音=百合というイメージがついている。
大量に買うことはできないけど。1本だけなら良守にも買える値段。
キレイにリボンをかけてもらって。墓前に添えた。

07:涙を流すと、決まって風が吹く
泣いてもしょうがないことは、わかっているけれど。
二度と会えないんだと思うと、じんわりと涙が滲んでくる。
ふわりと風が吹いて、優しく頬を撫でていく。
「しゃきっとしなさいよ!」
なぜだろう。時音の声が聞こえた気がした。
なぁ、俺も、そこへ連れてってくれよ。
「バカ、何考えてんのよ。ここはあんたがくる世界じゃないわ」

08:今、何処かで、君は笑ってますか
死んでまで、俺を怒るのかよ。


09:天国があるとすれば
10:君は何時までも笑ってますように

結界師でやろうかなー。
でも「どす黒」なんでどうするか悩みです。
死ネタなので、ブログには載せずにサイトオンリーにするとか。
追記
すべてが白かった。
病室のベッドもカーテンも天井や壁さえも。時音が着ている病院着も。
そんな中で、良守の着ている墨村家の結界師の装束だけが、やけに黒さを強調していた。
「帰って寝なくていいの?」
「・・・時音の顔を見てからと思って」
「ありがとう。・・・どう? 烏森は?」
「相変わらず・・・だよ」
「そう・・・」
明け方の病室。本来ならば面会時間ですらない。だが、日中は学校へ行かなければならないし、夕方は時音の祖母・時子の目があるので、なんとなく病室を訪れるのが憚られた。よって、人目を忍んで寝静まった病院に来ていた。
さすがに天穴は隠してある。ほんのひと時でもいいから、時音の顔が見たくて。毎日、夜の烏森から帰る途中で、病院に寄っていた。ナースステーションの前を通るわけにもいかないので、窓からこっそりと忍び込んでいる。まるで泥棒だ。
それでも、時音はいつもなら起きている時間ということもあって、文句も言わずに良守を室内に招きいれてくれた。
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