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2008.05.01 Thursday

呪縛(遥と光征と知幸)

■呪縛(遥と光征と知幸)
光征が触れたら、びくりと体を竦ませて「やめてください」と小声で言う。
それでも無理矢理に光征が抱こうとしたら、「触らないで!」とその手を振り払って、力が抜けた遥はがくりとその場で蹲る。光征が起こそうとしたら、体が震えていることに気づく。

それなのに、後日、知幸と手を繋いで歩いている遥を目撃する。
「知幸! お前・・・。どうして、お前が遥といる」
「遥って・・・。光兄、何で遥さん、知ってんの?」
「・・・ワイズの社員だ」
「え・・・?」
揃って遥を見る。
「・・・お二人、知り合いなんですか・・・?」
「知り合いっていうか」
「年は離れてるが、兄弟だ」
「兄弟・・・?」
ぐらっと遥が倒れそうになり、「遥さんっ!」と慌てた知幸が支える。
「遥さん、大丈夫?」「ごめんなさい、ちょっと、びっくりして・・・」
知幸がしっかりと抱きかかえているのに、遥は嫌がる素振りを見せない。
それに光征はむっとする。
「遥さん、真っ青だよ! ね、向こうで休もう? じゃ、光兄、そういうわけだから」
遥を支えて知幸は歩き去っていった。

次に社長室に遥を呼んだときに、問い詰める。
壁際に追い込んで、遥の両脇に手をつく(一応、触れてません)。
それでも、遥はびくついて震えている。
「俺には触るなとか言っておいて、知幸とそういう関係だったとはな」
「ち、違います」
「何が違うと言うんだ」
怒っている光征に、遥は更に怯える。
「と、トモ君とは、恋人とかそういうんじゃないんです」
「じゃあ、何だ? 手を繋いで仲良く歩いていたように見えたが?」
「あれは・・・」
遥は一瞬、言葉に詰まる。
知幸がどう感じているかはわからないが、遥は「弟」のように思っていた。
温かい家庭を望んでいる、淋しがりの少年に見えた。
自分もずっと一人できたから、その淋しさがわかる。
だから、肩を寄せて並んでいるだけなのだ。
恋愛感情というのとは違う。
「・・・専務は、ご自宅に帰られないんですか?」
「は?」
突然の話題転換に、光征が面食らう。
「桧村さんにお聞きしましたが、社長はほとんど海外で、奥様も同行されているそうですね?」
「あ、ああ。そうだ。だから、俺がこうして社長室で仕事してる」
「私が夜勤のときのことしかわかりませんが。専務はほとんどここに泊り込んでいらっしゃいますよね?」
「・・・帰るとしても真夜中であることには違いないな」
「トモ君、淋しいんだと思います」
「淋しい? あいつももう二十歳になるんだぞ? 淋しいなんて・・・」
「幼い頃から、家に独りぼっちだったんじゃないんですか?」
反論する言葉がなくて、光征は黙り込む。
「帰らなくていいのかって聞いたら、帰ってもどうせ誰もいないから、私といるほうがいいって言ってました。多分、私じゃなくてもいいんだと思います。トモ君、家に帰らないで、友達のところとか、点々と泊まり歩いてるみたいですよ。一人になりたくないんだと思います」
光征は壁についていた手を力なく下した。
「・・・すみません。家のご事情に勝手に踏み込むような真似をして」
遥は深々と頭を下げると、逃げるように社長室を後にした。

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