■ ■ ■ 月の裏側 プロット
■月の裏側
01. 背を向けた夜
学校に新一が戻ってきた。
「戻ったら・・・」みたいに思わせぶりなことを言っていたくせに、学校側から出される課題の提出や、警視庁での残務処理に追われたりしているようで、結局、2人でゆっくり話せていない。
そんなときに、先輩から告白される(屋上に呼び出されました)。
「・・・好きな人が・・・」「工藤だろ? ずっと見てたからわかるって」
「工藤のこと待ってたのはわかってたから、そこにつけ入るような真似はするつもりなかったよ。でも、あいつが戻ってからも、付き合ってる様子もないし。だったら、正式に勝負してみようかなって。もやもやしたままじゃ、受験勉強どころじゃないから。当って砕けてもいいから、気持ちを伝えたかったんだ」
「すぐに返事くれ・・・なんて言わないから。オレのことも、見てもらえると嬉しいな?」
どうしようか・・・と悩んだこともあり、夜に新一の家に行ってみることにした。
2人でちゃんと話せば、お互いの気持ちが通じるかもしれない。進展するかもしれない―――と、一末の期待を寄せて。
明かりもついているし、鍵が開いている。玄関から読んでも返事がない。
「新一! いるんでしょー?」
勝手に入って、呼びながらリビングのドアを開けたら。
「ら、蘭っ?」
上半身裸な新一と、その胸に手をあてている女性がいた。誰? 一体、何をしてるの?
疑問は声にならない。新一が慌ててシャツを着て、彼女はバツが悪そうに視線を逸らした。
ああ、そういうことだったの。何で気づかなかったんだろう。新一も言ってくれればいいのに・・・。
言葉の代わりに涙が溢れて、「ごめんなさい」と背を向けて逃げ出した。
謝罪の言葉は、新一に聞こえたかどうかもわからない。
「蘭! 待てよ!」新一の声が聞こえたけど。もう知らない。勝手にすればいいわ。
しばらく、闇雲に走った。こんな泣き顔じゃ、どこへも行けない。でも、家にも帰りたくない。
園子に電話して、泊めてもらうことにした。
>新一Sideの「月の裏側」は、この時の話
解毒剤で元の体に戻ったけれど、志保はまだ体調が完全じゃないから、不安を抱いている。
昔見た、キングのTVドラマを思い出してしまった。どんどん若返って、消えちゃうんじゃないか・・・。
「コナンの姿に戻るだけじゃねーのか・・・?」「最悪、存在そのものが消えるわ」「消えるって・・・」
「私にも、どうなるかわからないの。でも、私には貴方を巻き込んだ責任があるから、必ず、つきとめるわ。
だから、もう少しだけ、待って・・・!」
志保に懇願されて、新一は蘭に真実を語ることもできず。自分が本当に消えるのかもしれないと考えると、
蘭に告白だなんてできるはずもない。
志保が定期健診と称して、毎晩、体調チェックしにくる。その現場を蘭に見られてしまった。
逃げ出した蘭を追いかけようとすると、「蘭さんに言っちゃだめよ」と釘を刺される。
「知るかよ! 蘭を泣かせてまで守りたいものなんて、ねーよ!
お前、必ず突き止めるんだよな? 元通りの体にしてくれるんだよな?
だったら、言ったってかまわねーだろ!」と、言うつもりで追いかける。
でも、蘭が見つからない。
自宅にも戻っていない。となると、園子のところか?
そう考えて電話してみると、「どちらさま?」とかあからさまに言われる。
「そっちに、蘭が行ってねーか?」「何のことかしら?」「行ってるんなら、それでいいんだ」
「・・・いるわ」「そっか・・・。さんきゅ」「それで終わり? 他に、言うことあるんじゃない?」
「今、何を言っても無駄だろ?」「それもそうね」「だから、今はいい」
「・・・私、新一君を一生許さないから」「・・・わかってる」
降り出した雨にぬれながら、やりきれない思いだけが心に蟠る。
翌日会った先輩に、「私、失恋しちゃいました」と言う。「え? 本当に工藤が毛利を振ったの?」「はい・・・。知らない女の人、家に連れ込んでました」
昨日、園子の前でも散々泣いたのに。また、涙が溢れてくる。
「あ〜あぁ・・・」泣き出した蘭の涙を拭ってくれる。
「失恋の痛手を治すには、新しい恋をするのがいいよ」「・・・でも、私、まだ新一のこと忘れてませんよ?」「うん、わかってる。元々、オレが好きになったのは、工藤のこと追いかけてる健気な女の子だよ。グチ聞いたり、男心のアドバイスくらいならできるよ」「そんなの、先輩に悪いです。そんな風には、付き合えません」「オレはいいの。君が笑ってるなら、それでね。じゃあ、彼氏ってことじゃなく、男心を学ぶための先生ってことで、隣に置いてみない? 案外、一緒のところを見せつけたら『もったいないことした』って、思いなおすかもよ」
それから、先輩と会うようになった。とはいえ、3年生で受験だから、図書館で並んで勉強しているだけだったり、校内でちょっと会話する程度。でも、美男美女でそれなりに目立つ。
新一は、ノーコメント・・・というより、自分の課題なんかで忙しくしている。
蘭がどうなろうと、本当に気にしないんだ。
02. 最後に笑い合った日を想う
「ちょっと! この園子さんに一言の相談もなく男とつきあうなんて、どーゆうことよ!」園子に詰め寄られる。
(新一のことばかりグチって、先輩の告白のこと話すのを忘れてた)
「ごめんね、園子」「だって・・・。新一君は? 本当に諦めるつもりなの?」「もう、いいの。そりゃ、知らない女の人連れ込んでた・・・っいうのもショックだったけど。それよりも、一、私には本当のこと、何も話してくれなかったし」「本当のことって?」「・・・コナン君のこと」「何で、ここであのガキが出てくるのよ」
「ね。驚かないで聞いてよ?」「新一君と恋人同士になりました――って言ったら驚くけど」「茶化さないで」「はいはい。で?」
「うん。コナン君、本当は新一なの」「・・・は?」
「だから。コナン君は新一なの」「え、と。ごめん。よくわからないんだけど? だいたい、新一君とあのガキじゃ、サイズが違うでしょ、サイズが! どうやったら高校生が小学生のサイズになれるのよ! そんな変装、聞いたこともないわ。魔法で変身したとでもいうの?」
「・・・たぶん」「はぁ・・・。驚くっていうより、呆れるわ」
「でも! そう考えると全部、つじつまが合うの。新一が現われたときって、必ずコナン君がいなくなってたの。それに、コナン君が言ったの。『絶対に戻ってくるから、それまで待ってて欲しい』って。だから、私、待ってたの。今は、事情があって話せないんだろうけど、ちゃんと、新一が戻ってきたら、本当のことを話してくれるって思ってた・・・」
「でも、音沙汰なしってこと?」「・・・うん」
「あのガキが新一君だって、証拠はないんでしょ? だったら、単にコナン君が蘭を悲しませないようにって、でまかせ言ってただけなんじゃないの?」
「そうかもしれないけど・・・」
蘭は力説するけど、園子は「思い過ごしなんじゃない? 有り得ないわよ」と取り合ってくれない。
「・・・新一、どうして本当のこと話してくれないんだろう・・・」ぽつりと呟く。
「アタシだって、真さんに言えないこととかあるよ? 何でも全部話すのが恋人だなんて、アタシは思わないけどな。好きだからこそ、知られたくないっていうか。知らないで欲しいって思う」
「私は・・・」「蘭だって、新一君に言ってないことの1つや2つはあるでしょ?」
「うん・・・そりゃあ・・・」告白されたのも、本当は知られたくなかった。新一に見つからなかったら、多分、自分からは言わなかっただろう。
もう、戻れないのかな。このまま、話せないで、終わっていくのだろうか。私たちは。
03. なんで君は普段通りなの?
それから数日、新一は学校に来なかった。
佐藤刑事から聞いた話では、新一が関わっていた事件は、国際的な犯罪組織だったとのことで、アメリカのFBIも捜査に動いていたため、FBIから日本に派遣されていた刑事(ジョディ先生)とともに、ワシントンに行っているということだった。
1週間後、また学校に来た新一は、そんな素振りは全くなくて。「ああ、ちょっと事件でさ」「またかよー」と、いつもと変わりない様子だった。
それが、歯痒くてしかたがない。
>新一がアメリカに行ったのは、事件のことだけじゃなく。
志保が師事していた科学者が向こうにいたから。
組織もそのことを知っていたから、ずっと連絡を取れずにいた。
彼なら、この悪循環を断ち切ってくれるかもしれないという一縷の望みを託して出向いた。
その結果、2人とももう大丈夫だということになった。
帰国してみると、蘭と先輩との関係は、校内でも「公認」のようになっていて。
逆に、新一が振られたようにも見える。
だからこそ新一は、蘭に悪い噂が立たないようにも、普段どおりにしているしかなかった。
04. せめて挨拶はしようよ
蘭が先輩と図書館に寄って遅くなったとき、生徒玄関で新一と鉢合わせしてしまった。
新一は見てみぬふり・・・という感じで、すたすたと歩いていく。
「ちょっと! 挨拶くらいしなさいよー!」「・・・ああ、じゃあな」
こっちを見もしないで、ひらひらと手だけ振って行ってしまった。
「・・・無視しなくてもいいのに」思わず呟くと、先輩も笑う。
「幼馴染って、こんなものなのかな? どれだけ仲が良かったとしても、片方に恋人ができると話もしてもらえないの? これじゃ、他人と同じじゃない」
「君たちの場合さ、幼馴染・・・っていうより、別れた恋人っぽいよな。何か、工藤が身を引いたように見えるな」「身を引いた・・・?」「そう。男心アドバイザーとして言わせてもらうけど。工藤は毛利のことが好きだと思うよ」「え・・・?」「なんていうか。自分との係わりを絶とうとしてるっていうか・・・。とにかく、毛利から離れようとしてる。それは、ただ単に他の男が出来たから・・・っていうのとも違うようだよなぁ。あいつの性格からして、普通なら挑んでくだろ?」
「そう・・・かも」
「何か、事情でもあるのかな? 探偵やってるんだろ? 危険な事件に巻き込まれてて、学校にも来てなかったってくらいなんだから・・・。そうだな、例えば、自分といることで毛利の命まで危険に晒す・・・ってことにでもなったら、身を引くかもな。オレだったとしても」
私を危険から、遠ざけようとしている・・・?
そんな・・・。まさか。事件は解決したって・・・。
本当は、解決してないの? まだ、係わっているの?
「気になるんだったらさ、ストレートにぶつかってみればいいんじゃないか? 毛利、何でも我慢しすぎ」
そう言われても、新一に冷たい視線で見られると、竦んでしまって聞けないままだった。
05. 困ったように微笑まないで
数日後、日直だった蘭は担任にプリントを配ってほしいと、職員室に呼ばれた。
プリントを受け取って、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、保健室から同じクラスの男子が出てきた。
「原田君? どうしたの?」「あ、毛利! それがさ! 体育の授業中に工藤がぶっ倒れちまって」
「あ、おいっ!」一緒にいた片瀬が原田を突く。それで、原田もしまった!という顔になる。
「新一が・・・、倒れた?」「・・・ああ。工藤のやつ、最近、あんまり体調良くないみたいだぜ?」
(原田君、思わず、暴露しちゃいます)
「ごめん、これ、配っておいて!」蘭は原田にプリントを押し付けて、保健室に駆け込んだ。
「あら? 毛利さん?」「し・・・、工藤君が運ばれたって聞いたんですけど・・・」
「ああ。彼なら、ベッドで寝てるわ。毛利さん、工藤君と仲が良かったわよね?」「え、ええ。幼馴染ですから・・・」「彼、警察に協力とかしてるのよね? それで、睡眠不足とかなってるのかしら・・・」
「眠ってる、だけですか?」「倒れた――って運ばれてきた時には、もう熟睡してたわ」「他に、悪いところとか・・・?」「起きてから診察してみないとわからないけど。工藤君、一人暮らしよね? 食事もちゃんと採ってるかわからないわね・・・」
ふーっと溜息を漏らしている。
前は、蘭も心配で食事を作りに行ったりしていたけれど。新一が戻ってからは、結局ぎくしゃくしたままで、工藤邸通いもしていない。
保健室の内線が鳴って、職員室に呼ばれたらしい。「毛利さん。良かったら、少し、ついててもらっていい?」「はい」
そっとカーテンを開けて覗くと、すやすやと規則正しく寝息をたてている。
やだ。本当に、新一に何かあったら、どうしよう・・・。
ベッド脇に座って、寝顔を見ながら、泣き出していた。
どれくらいそうしていただろう。すっと手が伸びてきて、蘭の涙を拭う。
「・・・何で、蘭が泣いてんだよ」「だってっ!」「ここ数日、警視庁行ってて、寝不足だっただけだ」「嘘!」「嘘ついてどーすんだよ」「だって、新一、痩せた!」「はぁ?」
06. どうしたって変わらないもの
07. 抱きしめたかったのは
08. 踏み出した一歩
09. 懐かしい距離
10. 今更だけど言わせてよ
01. 背を向けた夜
学校に新一が戻ってきた。
「戻ったら・・・」みたいに思わせぶりなことを言っていたくせに、学校側から出される課題の提出や、警視庁での残務処理に追われたりしているようで、結局、2人でゆっくり話せていない。
そんなときに、先輩から告白される(屋上に呼び出されました)。
「・・・好きな人が・・・」「工藤だろ? ずっと見てたからわかるって」
「工藤のこと待ってたのはわかってたから、そこにつけ入るような真似はするつもりなかったよ。でも、あいつが戻ってからも、付き合ってる様子もないし。だったら、正式に勝負してみようかなって。もやもやしたままじゃ、受験勉強どころじゃないから。当って砕けてもいいから、気持ちを伝えたかったんだ」
「すぐに返事くれ・・・なんて言わないから。オレのことも、見てもらえると嬉しいな?」
どうしようか・・・と悩んだこともあり、夜に新一の家に行ってみることにした。
2人でちゃんと話せば、お互いの気持ちが通じるかもしれない。進展するかもしれない―――と、一末の期待を寄せて。
明かりもついているし、鍵が開いている。玄関から読んでも返事がない。
「新一! いるんでしょー?」
勝手に入って、呼びながらリビングのドアを開けたら。
「ら、蘭っ?」
上半身裸な新一と、その胸に手をあてている女性がいた。誰? 一体、何をしてるの?
疑問は声にならない。新一が慌ててシャツを着て、彼女はバツが悪そうに視線を逸らした。
ああ、そういうことだったの。何で気づかなかったんだろう。新一も言ってくれればいいのに・・・。
言葉の代わりに涙が溢れて、「ごめんなさい」と背を向けて逃げ出した。
謝罪の言葉は、新一に聞こえたかどうかもわからない。
「蘭! 待てよ!」新一の声が聞こえたけど。もう知らない。勝手にすればいいわ。
しばらく、闇雲に走った。こんな泣き顔じゃ、どこへも行けない。でも、家にも帰りたくない。
園子に電話して、泊めてもらうことにした。
>新一Sideの「月の裏側」は、この時の話
解毒剤で元の体に戻ったけれど、志保はまだ体調が完全じゃないから、不安を抱いている。
昔見た、キングのTVドラマを思い出してしまった。どんどん若返って、消えちゃうんじゃないか・・・。
「コナンの姿に戻るだけじゃねーのか・・・?」「最悪、存在そのものが消えるわ」「消えるって・・・」
「私にも、どうなるかわからないの。でも、私には貴方を巻き込んだ責任があるから、必ず、つきとめるわ。
だから、もう少しだけ、待って・・・!」
志保に懇願されて、新一は蘭に真実を語ることもできず。自分が本当に消えるのかもしれないと考えると、
蘭に告白だなんてできるはずもない。
志保が定期健診と称して、毎晩、体調チェックしにくる。その現場を蘭に見られてしまった。
逃げ出した蘭を追いかけようとすると、「蘭さんに言っちゃだめよ」と釘を刺される。
「知るかよ! 蘭を泣かせてまで守りたいものなんて、ねーよ!
お前、必ず突き止めるんだよな? 元通りの体にしてくれるんだよな?
だったら、言ったってかまわねーだろ!」と、言うつもりで追いかける。
でも、蘭が見つからない。
自宅にも戻っていない。となると、園子のところか?
そう考えて電話してみると、「どちらさま?」とかあからさまに言われる。
「そっちに、蘭が行ってねーか?」「何のことかしら?」「行ってるんなら、それでいいんだ」
「・・・いるわ」「そっか・・・。さんきゅ」「それで終わり? 他に、言うことあるんじゃない?」
「今、何を言っても無駄だろ?」「それもそうね」「だから、今はいい」
「・・・私、新一君を一生許さないから」「・・・わかってる」
降り出した雨にぬれながら、やりきれない思いだけが心に蟠る。
翌日会った先輩に、「私、失恋しちゃいました」と言う。「え? 本当に工藤が毛利を振ったの?」「はい・・・。知らない女の人、家に連れ込んでました」
昨日、園子の前でも散々泣いたのに。また、涙が溢れてくる。
「あ〜あぁ・・・」泣き出した蘭の涙を拭ってくれる。
「失恋の痛手を治すには、新しい恋をするのがいいよ」「・・・でも、私、まだ新一のこと忘れてませんよ?」「うん、わかってる。元々、オレが好きになったのは、工藤のこと追いかけてる健気な女の子だよ。グチ聞いたり、男心のアドバイスくらいならできるよ」「そんなの、先輩に悪いです。そんな風には、付き合えません」「オレはいいの。君が笑ってるなら、それでね。じゃあ、彼氏ってことじゃなく、男心を学ぶための先生ってことで、隣に置いてみない? 案外、一緒のところを見せつけたら『もったいないことした』って、思いなおすかもよ」
それから、先輩と会うようになった。とはいえ、3年生で受験だから、図書館で並んで勉強しているだけだったり、校内でちょっと会話する程度。でも、美男美女でそれなりに目立つ。
新一は、ノーコメント・・・というより、自分の課題なんかで忙しくしている。
蘭がどうなろうと、本当に気にしないんだ。
02. 最後に笑い合った日を想う
「ちょっと! この園子さんに一言の相談もなく男とつきあうなんて、どーゆうことよ!」園子に詰め寄られる。
(新一のことばかりグチって、先輩の告白のこと話すのを忘れてた)
「ごめんね、園子」「だって・・・。新一君は? 本当に諦めるつもりなの?」「もう、いいの。そりゃ、知らない女の人連れ込んでた・・・っいうのもショックだったけど。それよりも、一、私には本当のこと、何も話してくれなかったし」「本当のことって?」「・・・コナン君のこと」「何で、ここであのガキが出てくるのよ」
「ね。驚かないで聞いてよ?」「新一君と恋人同士になりました――って言ったら驚くけど」「茶化さないで」「はいはい。で?」
「うん。コナン君、本当は新一なの」「・・・は?」
「だから。コナン君は新一なの」「え、と。ごめん。よくわからないんだけど? だいたい、新一君とあのガキじゃ、サイズが違うでしょ、サイズが! どうやったら高校生が小学生のサイズになれるのよ! そんな変装、聞いたこともないわ。魔法で変身したとでもいうの?」
「・・・たぶん」「はぁ・・・。驚くっていうより、呆れるわ」
「でも! そう考えると全部、つじつまが合うの。新一が現われたときって、必ずコナン君がいなくなってたの。それに、コナン君が言ったの。『絶対に戻ってくるから、それまで待ってて欲しい』って。だから、私、待ってたの。今は、事情があって話せないんだろうけど、ちゃんと、新一が戻ってきたら、本当のことを話してくれるって思ってた・・・」
「でも、音沙汰なしってこと?」「・・・うん」
「あのガキが新一君だって、証拠はないんでしょ? だったら、単にコナン君が蘭を悲しませないようにって、でまかせ言ってただけなんじゃないの?」
「そうかもしれないけど・・・」
蘭は力説するけど、園子は「思い過ごしなんじゃない? 有り得ないわよ」と取り合ってくれない。
「・・・新一、どうして本当のこと話してくれないんだろう・・・」ぽつりと呟く。
「アタシだって、真さんに言えないこととかあるよ? 何でも全部話すのが恋人だなんて、アタシは思わないけどな。好きだからこそ、知られたくないっていうか。知らないで欲しいって思う」
「私は・・・」「蘭だって、新一君に言ってないことの1つや2つはあるでしょ?」
「うん・・・そりゃあ・・・」告白されたのも、本当は知られたくなかった。新一に見つからなかったら、多分、自分からは言わなかっただろう。
もう、戻れないのかな。このまま、話せないで、終わっていくのだろうか。私たちは。
03. なんで君は普段通りなの?
それから数日、新一は学校に来なかった。
佐藤刑事から聞いた話では、新一が関わっていた事件は、国際的な犯罪組織だったとのことで、アメリカのFBIも捜査に動いていたため、FBIから日本に派遣されていた刑事(ジョディ先生)とともに、ワシントンに行っているということだった。
1週間後、また学校に来た新一は、そんな素振りは全くなくて。「ああ、ちょっと事件でさ」「またかよー」と、いつもと変わりない様子だった。
それが、歯痒くてしかたがない。
>新一がアメリカに行ったのは、事件のことだけじゃなく。
志保が師事していた科学者が向こうにいたから。
組織もそのことを知っていたから、ずっと連絡を取れずにいた。
彼なら、この悪循環を断ち切ってくれるかもしれないという一縷の望みを託して出向いた。
その結果、2人とももう大丈夫だということになった。
帰国してみると、蘭と先輩との関係は、校内でも「公認」のようになっていて。
逆に、新一が振られたようにも見える。
だからこそ新一は、蘭に悪い噂が立たないようにも、普段どおりにしているしかなかった。
04. せめて挨拶はしようよ
蘭が先輩と図書館に寄って遅くなったとき、生徒玄関で新一と鉢合わせしてしまった。
新一は見てみぬふり・・・という感じで、すたすたと歩いていく。
「ちょっと! 挨拶くらいしなさいよー!」「・・・ああ、じゃあな」
こっちを見もしないで、ひらひらと手だけ振って行ってしまった。
「・・・無視しなくてもいいのに」思わず呟くと、先輩も笑う。
「幼馴染って、こんなものなのかな? どれだけ仲が良かったとしても、片方に恋人ができると話もしてもらえないの? これじゃ、他人と同じじゃない」
「君たちの場合さ、幼馴染・・・っていうより、別れた恋人っぽいよな。何か、工藤が身を引いたように見えるな」「身を引いた・・・?」「そう。男心アドバイザーとして言わせてもらうけど。工藤は毛利のことが好きだと思うよ」「え・・・?」「なんていうか。自分との係わりを絶とうとしてるっていうか・・・。とにかく、毛利から離れようとしてる。それは、ただ単に他の男が出来たから・・・っていうのとも違うようだよなぁ。あいつの性格からして、普通なら挑んでくだろ?」
「そう・・・かも」
「何か、事情でもあるのかな? 探偵やってるんだろ? 危険な事件に巻き込まれてて、学校にも来てなかったってくらいなんだから・・・。そうだな、例えば、自分といることで毛利の命まで危険に晒す・・・ってことにでもなったら、身を引くかもな。オレだったとしても」
私を危険から、遠ざけようとしている・・・?
そんな・・・。まさか。事件は解決したって・・・。
本当は、解決してないの? まだ、係わっているの?
「気になるんだったらさ、ストレートにぶつかってみればいいんじゃないか? 毛利、何でも我慢しすぎ」
そう言われても、新一に冷たい視線で見られると、竦んでしまって聞けないままだった。
05. 困ったように微笑まないで
数日後、日直だった蘭は担任にプリントを配ってほしいと、職員室に呼ばれた。
プリントを受け取って、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、保健室から同じクラスの男子が出てきた。
「原田君? どうしたの?」「あ、毛利! それがさ! 体育の授業中に工藤がぶっ倒れちまって」
「あ、おいっ!」一緒にいた片瀬が原田を突く。それで、原田もしまった!という顔になる。
「新一が・・・、倒れた?」「・・・ああ。工藤のやつ、最近、あんまり体調良くないみたいだぜ?」
(原田君、思わず、暴露しちゃいます)
「ごめん、これ、配っておいて!」蘭は原田にプリントを押し付けて、保健室に駆け込んだ。
「あら? 毛利さん?」「し・・・、工藤君が運ばれたって聞いたんですけど・・・」
「ああ。彼なら、ベッドで寝てるわ。毛利さん、工藤君と仲が良かったわよね?」「え、ええ。幼馴染ですから・・・」「彼、警察に協力とかしてるのよね? それで、睡眠不足とかなってるのかしら・・・」
「眠ってる、だけですか?」「倒れた――って運ばれてきた時には、もう熟睡してたわ」「他に、悪いところとか・・・?」「起きてから診察してみないとわからないけど。工藤君、一人暮らしよね? 食事もちゃんと採ってるかわからないわね・・・」
ふーっと溜息を漏らしている。
前は、蘭も心配で食事を作りに行ったりしていたけれど。新一が戻ってからは、結局ぎくしゃくしたままで、工藤邸通いもしていない。
保健室の内線が鳴って、職員室に呼ばれたらしい。「毛利さん。良かったら、少し、ついててもらっていい?」「はい」
そっとカーテンを開けて覗くと、すやすやと規則正しく寝息をたてている。
やだ。本当に、新一に何かあったら、どうしよう・・・。
ベッド脇に座って、寝顔を見ながら、泣き出していた。
どれくらいそうしていただろう。すっと手が伸びてきて、蘭の涙を拭う。
「・・・何で、蘭が泣いてんだよ」「だってっ!」「ここ数日、警視庁行ってて、寝不足だっただけだ」「嘘!」「嘘ついてどーすんだよ」「だって、新一、痩せた!」「はぁ?」
06. どうしたって変わらないもの
07. 抱きしめたかったのは
08. 踏み出した一歩
09. 懐かしい距離
10. 今更だけど言わせてよ
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