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2008.06.19 Thursday

バスケ部話

DIVEを見たら、青春小説が書きたくなった(笑)
「みんな、集合ー!」
 佐伯キャプテンが声をかけると、コートに散っていた男子部員たちがぞろぞろと集まってきた。
 高いところから「誰だ? こいつ?」という視線が痛いほど降ってくる。
「しばらくの間、マネージャをやってもらうことになった、穂積菜月ちゃん。女子の穂積の妹さんだ」
 キャプテンが紹介してくれた後、あたしは「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「せっかく、オッケーしてもらえたんだから、お前ら、あんまり苛めんなよ」
「はーい」
「じゃ、練習再開!」
 パンとキャプテンが手を打つと、それぞれやっていた練習に戻っていった。
 やっぱり、みんな大っきいな。キャプテンが小柄に見える。多分、ガードあたりかな。
「面子は、追々覚えていってね。じゃあ、仕事の説明するね」
 昨年まではマネージャがいたそうだけど、3月に卒業してしまったそうで。春休みの間は、部員たちみんなで分担しながらやってきたそうだ。部室に案内されると、それを物語るかのような散らかり様。練習中に必要なものは、体育館に持っていっているから今はいいとしても。一度、大掃除が必要かもしれない。
「ボール磨きは一年にやらせるとして・・・」
「洗濯とか、どうされてるんですか?」
「ユニフォームとかタオルとかは今は各自やらせてる。ビブスは仕方ないからまとめて俺がやってる。一応、この部室棟の端に各部共通の洗濯機があるんだけど・・・」
「はい。女子部でも使ってます」
「あ、そうだね。何種類か用意してるから、毎日じゃなくてもいいとしても。やっぱり、汗臭くなるし」
「えっと・・・。以前のマネージャさんは練習中って、体育館にいらっしゃいました?」
「前半が基礎練で、後半に紅白試合とかやるから、後半の時にスコアつけたりはしてくれてたけど。始まる前に救急箱とかビブスを準備してから、姿が見えなかったから。そのとき、洗濯とかしてたのかも」
 一人でやっていたというならそうなるだろうな。
「わかりました。じゃあ、少し、ここを片付けたら体育館に戻ります。なにかあったら呼んでください」
「ありがとう」
 キャプテンが出て行って部室に一人になった。
 ふうっと改めて室内を見回す。どこから手をつけたらいいんだろうか。
 まずは、窓を開けて空気を入れた。女子部の部室と違って、やっぱりこれは男臭いと言うんだろうか。
 部屋の三方向が着替えや荷物を入れているであろうロッカーになっている。残りの一面の棚には、必要なのか必要じゃないのか。わからないものが色々と入れてある。部屋の真ん中には机があって、私物も入り乱れている。
 とりあえず、足元にあった洗濯籠に洗濯物と思しきものを拾い集めていった。
 まぁ、私物だったら私物でもいいか。
 纏めてから白いものと色物にわける。これは自宅でも煩く言われていたから、同じようにわけることにした。
 棚から洗剤を発掘すると、籠を1つ持って洗濯室へと向かう。幸い、4つ並んだ洗濯機の1つが未使用だった。使う場合はホワイトボードに部の名前を書くようにと女子部で説明のときに聞いていたから『男子バスケ部』と書いてスイッチを押した。ドラム式で乾燥までしてくれる。さすが、お金をかけている学校は違うな。
 次は机の上のゴミと思しきものを拾い集める。空缶、お菓子の袋、丸めたティッシュ。ゴミ箱があるのに、ちゃんと捨てなさいよ、と思う。
 本は1箇所に重ねて、後で私物と部内のものをわけてもらおう。
 プリント類は捨てていいのかもわからないし、これも束にして本の上に置いた。
 あとは軽く床を掃いて、今日のところはここまでかな。
 時計を見ると、もうずいぶんと時間が経っていた。
「あ! 洗濯機!」
 もう終わっているような時間だ。引き上げてきて畳まないと。
 くるっと回れ右して、洗濯機のところへ駆けていく。思ったとおりすでに電源が切れていて、終了していることを示していた。第2回目となる色物に入れ替えて、再びスイッチを押した。
 洗濯籠を抱えて部室に戻る。
 ドアを開けると、目の前に上半身裸になった男の人がいた。その人も突然開いたドアに驚いて、こっちを見ている。あたしの目は彼の胸辺りに一瞬だけ釘付けになった。
 男の人の裸なんて、お父さんで見慣れていると思っていたけど。メタボリック一歩手前なだらしない体と、バスケ部で日々鍛えている体とではまるっきり違う。
「きゃーっ! ごめんなさいっ!」
 慌ててバタンッと思いっきりドアを閉めた。
 もう部活が始まっているから、誰も来ないと思っていたけど。そうよね。遅れてくる人だっているわよ。あたしのバカ。ノックくらいするのが常識じゃない。
 頬が熱い。着替えを終えた彼が出てきたとしても、恥ずかしくて顔を合わせれない。
 ドアの横にしゃがみこんで、顔を隠すように膝を抱えた。
 待つこと数分で、カチャッとドアが開いた。
「脅かしてゴメン。着替え、終わったから」
 あたしが謝らなきゃいけないところなのに。先に謝られてしまった。
「い、いえ。あたしこそ、済みませんでした」
 立ち上がって、そのままぺこりと頭を下げる。まだ火照ったままで、顔なんか上げれない。
「こっちも鍵かけてなかったんだし。おあいこってことで」
 ぽんっと頭を撫でられた。大きな手の中に、あたしの頭はすっぽりと収まってしまっているみたい。
 何だろう。ちょっと、懐かしい感じ。
 あ、そうだ。小さい頃、お父さんが褒めてくれるとき、こんな風に撫でてくれた。あたしはそれが好きで、もっと褒めて欲しくて頑張ったんだった。
「やべっ。俺、遅れてんだった。じゃあ、あとよろしく!」
 一気に言うと、彼はくるりと背を向けて走り去っていった。
 あたしがようやく顔を上げたころには、彼の姿は部室棟の角を曲がって見えなくなっていた。
 うわっ・・・。あたし、何か、すごく失礼なことをしちゃったなぁ・・・。
 今更ながらに自分の行動を反省する。遅すぎるけど。
 結局、顔もまともに見なかった。これじゃあ、あとで改めてご挨拶もできないじゃない・・・。
 はあっ。
 またしても、自己嫌悪。
 これだから、あたしって。
 部室に入って洗濯籠を机の上に置く。長椅子に座って籠からタオルを取り出しては畳んでいく。
 お皿洗いとか、洗濯物を畳むとか。こういった単純作業は得意だ。みっちゃんが料理を作ってくれるから、代わりにあたしが後片付けをやるようになった。洗濯物も竿には届かないから干すのはみっちゃんがやって、取り込んだものをあたしが畳んでいた。みっちゃんのほうが出来ることが沢山あるから。あたしはあたしの出来ることだけでも手伝っていた。
 マネージャーの仕事って、家のお手伝いと同じだね。
 両親が安心して仕事ができるように、あたしもみっちゃんもなるべく家の手伝いをしていた。
 ここでも、部員のみんなが気持ちよく練習できるように、あたしはそのお手伝いをしているんだ。

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