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2008.06.20 Friday

ほしことばお題。6/21

こっち、使うかな。
「本日付で、羽田航空基地に配属となりました、五十嵐です。以後、よろしくお願いします」
 颯爽という言葉が似合う。
 羽田特殊救難基地に着任の挨拶にきた五十嵐に、真田はふっと笑みを零した。
 仙台での追加研修を終えて、五管の配属になっていたはずだ。
『次に会うときは、真田君を吊り上げる時ね』
 保大の卒業時、そういって別れた。
 その言葉通りになりそうだ。
 顔を上げた五十嵐と視線が合った。向こうも笑って、小さく頭を下げた。
「ん? そういえば、お前ら、同期だったな?」
 僅かなやりとりに、黒岩が反応する。案外、よく見ている。
「はい」
 あまり深く追求されるのも嫌で、短く答えた。

 そうやって挨拶を交わしたのも束の間で。
 その日のうちに、彼女の操縦で飛ぶことになった。
 海保始まって以来、初の女性パイロットとして彼女の名前は知れ渡っている。五管での実績も聞こえている。
 それでも、やはり、訓練もなしに飛ぶことに隊長の黒岩は渋い顔をした。
 機長と副操縦士、整備士、そして乗り込む特救隊員と。
 確固とした連携が取れないと、救助は成功しない。顔合わせを終えただけの状態では、まだ信頼しきれないというのが本音だろう。
「五十嵐機長なら、大丈夫です」
 副隊長である真田の言にも、黒岩は表情を崩さない。
「・・・お前、それは同期のよしみで言っとるんじゃなかろうな?」
 ぎりっと厳しい視線で睨まれる。
 対立はいつものこと。互いに命を扱う者同士、とことん協議しあう。
 人命救助に妥協という言葉は許されない。
「我々の命を預けるに足る腕を持っています」
 実際に五十嵐のフライトを見たことはなかったが、その思いに揺るぎはなかった。
 それは、気心の知れた相手だからという安心感なのか。
 完璧主義である五十嵐を知っているからなのか。
 自分でも、理由なんてわからない。
 だが、これだけは言える。
「俺は、五十嵐機長となら安心して出動できます」
 真っ直ぐに黒岩を睨み返すと、しばらくの間、じっと探るような視線で見返された。
「・・・真田がそこまで言うなら、本物か」
 やれやれと頭を掻いて、最後のブリーフィングを行った。

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