■ ■ ■ 星降る夜に
At night when the star falls
starry night
http://luxin.blackcats.jp/stories/StarFall.Another.html
プラネタリウム+回収屋?
そんなノリで。
starry night
http://luxin.blackcats.jp/stories/StarFall.Another.html
プラネタリウム+回収屋?
そんなノリで。
この街で一番高い建物は、鋼鉄の無機質な電波塔だ。
塔の真ん中ほどには展望台が設置されており、人間たちが自分たちの住む下界をひとしきり眺めている姿が見えた。所狭しと建物が建ち並び、その隙間を往来する人や車が小さな豆粒になって見えるのをヤツ等は何を考えて見下ろしているんだろうか。
かつては自分もその一人だったはずなのに。今となってはぼんやりと曖昧になってしまった古い記憶。もう、それが本当に自分の過去なのか、どこかで聞いた物語なのかすらわからないほどになっている。
塔の先端に座って眼下の光の洪水を一瞥した。
街がこんなに明るいから、探すべき本当の光が見つからない。
天上を見上げると、広がるはずの星屑の大海原はなく、その場所にさえも文明の光が横切っていく。
「・・・こんな街、嫌いだ」
はあっと溜息を吐いて、膝を抱えて縮こまる。
毎晩、毎晩。同じことを繰り返している。それでも、一向に終わりが見えてこない。
否、終わりなど、無いのだ。
ごそごそと羽織ったコートのポケットを探ると、中から小さな瓶を取り出した。中にはビー玉ほどの小さな珠が入っていて、真珠のように白い輝きを発していた。瓶が揺れるごとに、カラカラとガラスにあたって音を立てる。
「まだ四つかぁ・・・」
サボっているわけではないが、やる気がないのだから同じことか。
叱られることさえ我慢できれば、別に気合いを入れて集める必要などない。それがかえってだらだらとしてしまう理由なのかもしれない。でも、強制されたとしたら反発してしまうんだろうな、と思う。
結局はこうやって適当に時間を潰して帰る。
別にどうだっていい。今日やらなくても、明日がある。明日がダメでも明後日がある。
時間は、永遠に続くんだから―――。
「相変わらず、辛気臭い顔してんな」
突然、声が聞こえてきた。振り返ると、見知った顔がふわりと舞い降りてくる。
「・・・ソラは、もう終わった?」
「まあな。戻るとこだ」
自慢気に言って、手の中の小瓶を振って見せる。瓶の中には隙間もないくらいに珠が詰まっていた。
「さすが。優等生は違うね」
「お前だって、もっと飛び回れば簡単に見つけられるって。セイは眼がいいんだから」
「うん・・・。でも、飛ぶのって慣れなくて」
ふわふわと宙に浮かんだままのソラを見ていると、やっぱり違和感がある。自分も飛べるくせに、人間の姿そのままで浮遊している図は、有り得ないと脳が判断してしまう。そんな部分だけ、いつまでも人間だった頃の自分を引き摺っている。
人間だったら、そもそもこんな場所に座っているということ自体が有り得ないことだというのに。
塔の先端は二人並んで座れるほどの広さはない。ソラはそのまま隣に浮かんでいた。
「ここは集まりやすい場所だもんなぁ。陣取りとしてはいい場所だよな」
「うん」
行動派のソラは方々を飛び回って珠を集めている。消極的な自分にはこうやって珠が集まってくるのを待っている方が楽だし、似合いだ。
やり方は各自の自由だし、集められなかったからといって咎められることはない。
それに。沢山集めたからといって、ご褒美があるわけでもない。
この仕事の意義とか、そんなものも実際のところよくわからない。
やれと言われたからやっているだけ。別に他のことだって同じ。
「あ」
下界から勢いよく飛んでくる光る珠に気付いた。軽く塔を蹴って珠に向かって手を伸ばす。
ぱしっと手の中に珠を掴み取った。
慣性の法則でそのまま前に進みそうになる。足を前に出してブレーキをかけ、体が止まったところでまずは珠を瓶にしまった。せっかく取ったのに落としてしまってはもったいない。また拾いに行くのも面倒だ。
塔の上に戻る。やっぱり、地に足がついていないと気持ち悪い。酔ったような気分になる。
「さすがだな」
「これくらい・・・。ソラだって見えたくせに」
この仕事に抜擢された最大の理由が眼だ。視力というのとはちょっと違うらしい。
こんなにきらきらと輝いている珠が見えないヤツがいるなんて、驚きだ。
「さってと。オレは戻ろうかな。セイはまだ粘る?」
「う・・ん・・・、そうだなぁ・・・」
正直、やる気が無い。ただ、お小言を言われるのがわかっているから、帰るのをずるずると引き延ばしているだけだ。どうせ朝まで待ったって、瓶が一杯にはならない。今帰っても、朝帰っても同じは同じ。
歯切れ悪くうだうだとしていると、ソラは返事も待たずに上昇し始めた。
「あ、忘れるとこだった」
三メートルほども離れてから、不意にソラが止まった。
「トワが顔出せってさ」
遥々、ここまでやってきた本当の理由はその言葉を伝えるためだったらしい。
トワの名前を聞いて、苦虫を噛み潰したような顔になってしまっただろうボクを笑って、ソラはふっと闇に溶け込んだ。
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